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騎士団の本隊と合流して一路今夜の宿場町に。
とりあえず、宿お勧めの夕食を食べて、いつもの試食会。フリーズドライに合う食べ物談義に花が咲いた。
私が気になるのは今の方法と乾燥の時に真空に近い状態にした場合の味や食感の差なんだけど……真空作るの難しいよね。真空ポンプどころかポンプが無いもん。そもそも、今の技術じゃ密閉できる容器が…。むしろ耐圧性能が…。あ、シリコングリスとかOリングとかも無いだろうし…。
えーと……とりあえず、今のフリーズドライで頑張って貰お。
今夜の女子会のテーマは本日どの騎士団員が格好良かったか。
当然、勇者は入りません(笑)
脳筋除外で。
『ところで、マリアンヌは盗賊団に何をやったの?』
「さぁ…」
『まるっきり覚えてないの?』
従姉の質問に力強く頷いた。
「妹を誘拐しようとしたなら、たぶんちょっとばかしペシペシしたんだと思うんだけど…」
『覚えてなくても大丈夫。マリアンヌさんは可愛いから』
話がつながりませんが、剣士さん。
『私としては、一緒に闘った騎士団には悪いけど、ラスボス的なマリアンヌさんが一番だったのよ』
『ああ、笑顔でポッキリ的な』
『目が据わってるのに、小首を傾げながらの可愛らしい笑顔。サイコーでした』
えーと、みんななんか勘違いしてるよね。
『さすがはリース商会の隠し賢者様よね』
はい?魔術師さんの口からなんか不穏当な渾名が…
『それ、マリアンヌ知らないから』
従姉が笑った。
「ってか、そもそも私リース商会に関係ないし」
『うん。だからウチには賢者は居ませんって返したの。そしたら隠し賢者扱いに』
「姉さん、ごめん。最初っから話して。そもそも賢者って何?」
意味わかんない。
『ほら、マリアンヌって子供の頃から時々商売のアドバイスくれたじゃない』
えーと、欲望に忠実だった頃の話かな。子供だったから仕方ないじゃん。欲しい欲しいとだだこねて、色々作って貰ったのはうっすら記憶している。
『で、いつの間にかリース商会には賢者が付いてるって噂になってて』
………。
『直球で聞いてきた人がいるから否定したら、なぜだか隠し賢者様になってたの』
「……賢者と言い出した始めの方の人を5人ばかり連れてきて…そう…最初の人じゃなくていいの」
俯いてた顔を上げた。
「そう言ったことを絶対に後悔させてあげる!」
拳を握って宣言した。
『マリアンヌ落ち着いてぇ、あなたが本気出すとマズいからっ』
従姉の顔が蒼くなってきて縋るように私の腕に掴まった。
「姉さん大丈夫よ。怪我させないし、二度とそういうことを言えないようにするだけだから」
『そう言って、何人か再起不能にしたの忘れたの?』
「記憶にありませんっ」
『……』
『…ラスボス』
今日は不愉快なことありまくりだ。それもこれもきっと勇者が悪い!ええい!帰れ!二度と来るな!




