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『今度、海の方へ魔物討伐に行くことになったんだけど…』
「行ってらっしゃい!」
勇者の言葉を遮り、追い出しにかかる。
『マリちゃんも一緒に海行かない?』
「行かない」
騎士団の危ないヤツらから妹を守らなきゃいけないからムリ。
『ブランシュちゃんからお土産リストを貰ったんだよ』
はぁ?あのちゃっかり者っ!
『あとアンジェリーク叔母さんから支店の様子を見てきてくれって頼まれた』
アンジェリーク叔母さんって私の叔母のことですよね?何回か一緒に飲んだだけで、なんでお前が馴れ馴れしく呼ぶかな。
ってか、いつの間にそんなもん頼まれてんだよ!
『弟君からは…』『お父さんからは…』
待て待て。お前いつの間にかウチの家族にめちゃ食い込んでるじゃないか。あれ?叔母の支店のあるとこってカスレ?…………ヤバい。アソコはヤバい。
「騎士団も一緒に行くんだろ?民間人が紛れ込むわけにはいかないだろ」
正論攻めだ。
『リール商会も一緒に行くよ』
何でやねん。
『叔母さんとこがちょうど第3騎士団カスレ支部への納入で行くんだってさぁ。そんなに急がない旅だし、旅は道連れ世は情けって』
「いや、それは仕事だし」
『第3騎士団の団長からもマリちゃんの同行の許可出てるよ』
何でやねん!
有り得ないだろ!
『僕が快適なようにしてくれるんだって』
「ふざけんなっ!」
許容範囲から逸脱したわ!
「未婚の町娘が勇者と討伐旅行とか有り得んわ!」
『ん?でも、王様の許可も出てるし』
はぁ?
ってか、それが一番重要な話だろ!ってか、そろそろ国外逃亡しよか…。あ、今回のウチの家族が承認してるわ。
『リール商会からは他にも女性来ることになってるよ。マリちゃんが一人参加って形じゃないから大丈夫』
何だろ。この周りから埋め立てられた感。
いや、でも、カスレにだけは行きたくない。あそこには二度と会いたくないくらい暑苦しいヤツが…
 




