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今日も王都は平和です。
天気いいからシーツの洗濯してたら、いつもの邪魔者が現れた。平和じゃなくなったじゃないか。
大物の洗濯は大変なんだから、邪魔すんなよ。
『マリちゃん♪』
今日の勇者は明るい笑顔で、いつもの小さいバッグから麻袋を取り出した。
『ソバの実らしい。米を探してもらうように王様に頼んでたら、なぜかコレが来たんだ』
お前の説明が悪かったからわからなかったんじゃないのか。
「で?」
キレイに洗えたから物干し竿を用意して干そうとしたら、なんで一歩下がるんだ?勇者よ。
ちなみに、そこはまだ射程圏内。竿の長さを考えようよ。
『作って』
「ヤダ」
間髪を入れずに棄却。
『途中で干し肉買ってきたんだ』
「ありがとう」
この間 弟に連絡しないでみんなで外食しちゃったからなぁ。肉で機嫌を直して貰お。
『で、ソバなんだかけど…』
チッ。コイツもなんだかなんだ言ってウチに馴染んできたな。気をつけねば。
「寄越せ」
って、受け取ったけど、よく考えなくてもソバの実なんて見たことないや。
『………マリちゃん、コレ何?』
「たぶん、そば粥」
『お蕎麦が食べたかったんだよぉ』
「ソバじゃん」
『麺類のお蕎麦っ』
なんでコイツ些細なことで泣くかな。
「言わせてもらえば……ソバの実をそのまま渡された。私にその実をひくところから始めろと?」勇者の顔が盛大に引きつった。
「まずは、水車小屋でひいて来い!」
『はいっ!』
勇者は急いで食べると飛び出して行った。
出されたものはどんなものでも完食するのはいいことだ。
さて、今夜はそば粥と…干し肉で何作ろうかなぁ。
ソバの実は一袋残ってるし、好評だったらまた作れるな。
だから勇者は二度と来るな!
 




