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そもそも、私が勇者と出会ったのは、魔王討伐の凱旋パレードでした。学校がお休みになったので、妹を連れてお祭り騒ぎの見物に出かけたのが間違いでした。
妹が見やすいように人垣の前方に陣取って眺めたオープンタイプの馬車を何台も連ねた勇者一行。いかにも日本人な勇者は置いといて、銀髪さらさら中性的美しさの神官様、金髪キラキラの王女様なんかを眺めてたらテーマパークを思い出しちゃって。
「やっぱり電飾はないわよね」
その小さなつぶやきが運の尽き。
一瞬後に目の前に勇者が立っていました。
『電飾って言ったよね。もしかして転生?』
えっ、聞こえてた?ヤバい。冷や汗だらだらでブンブンと首を横に振りました。
『千葉にあるのに東京って詐欺だと思いませんか?』
うっかり頷いちゃいました。
あ……………。
『パレードの最中なんで、また後で』
爽やかな笑顔を残して消える勇者。はっとしてパレードを見ると何食わぬ顔で馬車に乗ってました。
『今、勇者様がここに居なかった?』『勇者様が…』
ざわめきに焦って、妹の手を引いて逃亡。平凡を絵に描いたような私。ちょっと離れたら絶対に見つからない自信あり。勇者に声を掛けられた人として有名になる気なんてさらさらなかった。