49
『昨日さ、鉄板の上でじゅうじゅういう肉汁たっぷりのハンバーグを食べる夢を見たんだ』
マジ食べ物だけだな、勇者。
『ハンバーグの上にはチーズがとろけてて。付け合わせは人参、コーン、えっと…………緑の…』
「クレソンか何かか?」
『それそれ!で、スッゴいいい匂いしてて、切ったらじゅわって…』
勇者はうっとりと夢を語る。この場合の夢は将来の希望じゃなくて、文字通り夜見るやつって…残念なヤツ!
『で、口に入れようとしたら、魔物警報で呼び出されたんだ』
本気で泣くな。食べようとしたのは夢の中だ!
「で?」
『ハンバーグ食べたい』
「ダメ!」
『なんで?』
「死にたいのか?」
『死ぬよりハンバーグ食べたい』
「だから死にたいのか?」
『死んだら食べられないじゃん』
「なんで私がいつもは干し肉とベーコンとハム以外の肉を使わないか考えたことはあるか?」
『好きだから?』
ベシっ。たまには素手でど突いたろ。
「危険だからだ!」
「日本と同じと思うな!素人が流通している生肉に手を出せるレベルにない!」
『ええ!っでも、魔王討伐の旅じゃ狩猟で捕ったやつ捌いて食べてたよ』
「うちで潰した鳥は食うわっ!誰かが捌いたやつは市場では買わないって言ったの!冷蔵も冷凍もできないから、生肉も常温で売ってるんだよ」
コイツ マジいつか死ぬぞ。ハンバーグが落ちてたら拾い食いしそう…
『えっじゃあ…』
「塊ですらヤバいのに挽き肉なんてもってのほか!どんだけ細菌が繁殖してるかわかんないぞ!」
『マリちゃん詳しいね』
むしろお前がヤバい。2年もいて何見てる?
あれ?勇者って王女様たちとの旅だったから、意外と世間知らず?もしかしたら、勇者だから何食べても大丈夫かも?
まぁ、いいや。とりあえず、帰れ!二度と来るな!




