43
家にいると勇者がやってきてうるさいので、たまにはと父の店に出掛けた。
家は王都の外れの方にあるが、それでは商売が成り立たないから、もう少し中心部に近いところに父の店はある。
そろそろお昼でもあり、交代して休憩を取って貰おうと父に声をかけた。
『あ、マリアンヌ嬢。お久しぶりです』
どこかで見た顔の騎士がそばにいた。
ん?10倍君じゃん。
『巡回でお邪魔してます。この辺り僕の管轄なんですよ』
「…ご苦労様です」
頭は下げない。
『マリアンヌ一人だと物騒だから、少しお茶でも飲んでってくれるとありがたい』
父よ、それ余計なお世話。
『ゴチになります』
ちょっと待て、なぜ10倍君が馴染んでる?
『いやあ、マリアンヌ嬢のとこで分量間違ったの食べたじゃないですか』
はあ…。
『最初食べた時はもうダメだと思ったんですけど、あれから普通のを食べてももの足りなくて』
10倍君は照れ笑い浮かべた。
『最近はここで買って自作始めたんですよ』
もしもし?
塩だけの味付けから一気に10倍カレー(ではない何か)の世界へ飛んだん?ってか騎士団ってそんなに稼げるの?
「10倍にするには高くないですか?」
『…ちょっと。だから、外食止めました。自作でも好みの味付けにできるのは給料日だけの楽しみです』
金が足りなくて悪に手を染めるなよ。待てよ。いっそ子飼いにすっか?今後の検討事項だな。
『今はちょっと第3騎士団が羨ましくて』
「第2の食堂も入れます?」
『団長あれからどんなに勧めても召し上がらないんです』
カルチャーショックだよな。二度と来ないだろうな(笑)
 




