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勇者は今日もやって来る。
『マリちゃん。テキーラとかウォッカみたいなお酒作れる?』
「ん?」
蒸留酒ならこの世界にも一応あるじゃん。
『普通の蒸留酒じゃなくて、火を吹くようなやつ』
「作れるよ」
『そこを何とか……えっ』
何だかえらくビックリしてるけど何なんだ。
「お酒を原料にして蒸留するだけでしょ。簡単じゃん」
『ええっ』
ちょうど叔母のところに話を持って行くのに手土産が欲しいと思ってたから、蒸留酒にするかな。
『……じゃ、エールじゃないビールは?』
「発酵はダメ」
キッパリ。
『ええ~っ』
「蒸留設備の設計して、作って貰ってで一週間かな。それまでに蒸留元のお酒を大量に用意しといて。作業場には叔父の倉庫を借りるとして………蒸留設備代とレンタル倉庫代がいるんだけど?」
とりあえず、計算上の金額の5倍をふっかける。
『マジできるん?』
「冗談で設計したことあるから大丈夫」
『冗談で?』
「忘年会で盛り上がってね。〈作ってはイケない机上の空論蒸留酒〉コンペ」
『はあ?』
「自分でシバリを決めて机上だけで蒸留酒の設備を作る冗談コンペ」
『はぁ…』
「優勝は百均の商品だけで作ったザ・ダサイゾー。想定収量が少なすぎて激笑い」
『……』
「3ヶ月分の休みを全部使って色々調べたりして頑張ったのに4位だったの」
『…………マリちゃんがわからなくなってきた』
いや、最初っから何もわかってないだろ?
「ちなみに優勝者はコンペの打ち上げを主催できる…つまりは奢ると」
『それなのに頑張ったの?』
「全員2位狙いで。手を抜くとその後1年間奢らなきゃいけなくなるし」
何だか引いてるけど、知らんわ。ってか、叔母へのお土産のために作業進めるから代金置いてって。
で、二度と来るな!




