39
一応、成分を調べたいっていうから材料のスパイスを取り分けた。本当に使っているのはその一部だが、棚にある全部のスパイスを少しずつ渡す。レシピの秘密は守る。
勇者の再現実験のために揃えたものだから、量もハンパないからわかるまい。
勇者の結界は便利で棚に入っている限り、香りも色も保たれる。
「せっかくですから〈カレーではない何か〉を召し上がってみてはいかがですか?」
『あ、いや』
『そこまでは…』
『食べる!食べる!』
固辞する騎士団長たちの声の他に余分なものが混じった。
『マリちゃんがそう言ってるし、騎士団長も食べて行きなよ。みんなで食べた方がおいしいし♪』
勇者お前いつの間に入って来た?
『『勇者様!』』
「よくいらっしゃるんですよ」
王都を守る騎士団なら、コイツがうちに来ないように取り締まりやがれ!
あと、〈カレーではない何か〉への苦情はコイツに回せ!暴れると王都の1つや2つ簡単に消えるけどな。
ってか、そろそろ可愛い妹帰ってくるじゃん。大変!さっさとコイツら追い返そう。
美丈夫な騎士団長に緊張した私は、お約束通りスープに通常の10倍の〈カレーではない何か〉を入れてしまう失敗をしてしまった。お優しい騎士団長様たちは、残さずに完食して汗をだらだらかきながらソッコー帰って行った。
ふん、二度と来るな!




