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商売の試算に忙しいからといって来客が帰るわけもなく、とりあえずハーブティーを勧めた。
簡単な挨拶が再開され、一応、王都を預かる立場上、紳士らしく淑女に対しての型通りの枕詞的な会話、お世辞ってか美辞麗句がずらずらと続いた。
庶民にはツラすぎるわ!ってか忙しいんだから、さっさと本題に入れ!
「騎士団長様。早速ですが、ご用件をお伺いしても?」
街の噂では騎士団は数字が小さくなるに連れてプライドが高くなるらしい。面倒事が極力回避が一番と下手に出てみた。
『マリアンヌ嬢。貴女が販売している〈カレーではない何か〉についてですが、それに対して良からぬ噂が…』
来たな!派手に売り上げてたからなんか横やりが入るとは思ってたぜ。税金はちゃんと納めてるぞ。過去の事例から言って脱税は政府から睨まれるし、民の同情も得られにくい。
乙女の正当防衛は認められるが、小金持ちの不正蓄財には世間の目は厳しいのよね。
「良からぬと言いますと?」
『麻薬のように中毒性があって無しではいられなくなると』
来たっ!目新しいものに飛びついてるだけで、そのうち飽きるって。
『お恥ずかしい話ですが、騎士団の中にも…』
あ………思い出した。騎士団同士って仲悪かったっけ?
あれか?坊主憎けりゃ袈裟まで憎い?勘弁して!
ってか、騎士団同士の喧嘩にか弱い乙女を巻き込むつもりなら、覚悟して貰います。二度と来たくなくなるような目に遭うことを。




