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『レシピ奪われたら〈カレーではない何か〉が食べらんなくなるかもしれないってこと?』
勇者本当にお前食欲だけだな。「可能性はある」
商人は思いっきり首を横に振るが、勇者が見てるのはこっちだ。
『僕、〈カレーではない何か〉が無くなったら暴れちゃうかも』
勇者よ。それは脅しだよな、脅し。
『…暴れ…』
商人の顔が盛大に引きつった。勇者が本気で暴れると王都の一つや二つあっさり消えるもんな。もちろんこの国に王都は一つしかないが。
「〈カレーではない何か〉の材料の一部を買い占められて作れなくなったりしたら大変だね」
『そんなことになったら暴れる!それに僕マリちゃんの愛情のこもったやつがいい』
愛情なんてこめたやつ一個もないわっ!
「今後の仕入れに不安があるんだよね」
『わ、私どもでスパイスの納入をお手伝いさせて頂いてもよろしいでしょうか?』
と、ありがたい言葉があったので、とりあえず今の仕入れの四分の一の値段を提示する。
『ひっ』
『安くなる?安くなる?』
悲鳴をあげる商人と歓喜の声をあげる勇者。商人の目にマジの涙が浮かんだ。
交渉の最終結果は現在の仕入れの半値。粗利ゼロかもな。卸価格からこんなに引けるなんて幸せだ。オマケに安定供給♪最低の納入量も決めてあるからな。ふふっ。
特別に〈カレーではない何か〉も卸してやることにした、八掛けで。
あ、勇者、交渉終わったから帰っていいよ。ついでに二度と来るな!




