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こう見えても前世では護身術には長けていた。ついでにキックボクシング(ボクササイズではない)、剣道、薙刀、棒術などを習っていた。棒術は免許皆伝である。師匠から貰った巻物を広げ、基礎的内容に大笑いしたのも懐かしい思い出だ。基礎を大切にって意味だろうと今ならわかる。
既に相手の歩き方や動作から弱点をつかんでいる。
チートではない。私の元々のスペックである。当然家族にも簡単な護身術は仕込んである。
レシピをくれたら売上に応じて一定の率で対価を払うと商人はのたまう。それは売上をキチンと計上してくれる前提の話だろ。黒い笑みを浮かべて言うことか?しかもちょっとって言うかかなり率悪いんだけど。
〈カレーではない何か〉のレシピは堂々この部屋の壁に貼ってある。気づかれないのは日本語で書かれているためだけである。それを暗号化と言う。もっとも勇者の字はあんまりきれいでもないから余計に読めないかもしれない。ある意味芸術の域に達している。前衛芸術だ。
商人はカップから一口飲んで首を傾げる。味がしなかったら正解だ。白湯だもん。木製カップだからわかりにくいが、当然色もついてない。
私が飲んでるのはいつものリンデンティー。前世からの愛用である優しいハーブティーだ。
商人は、急に資金繰りがどうの言い始めた。金が回らないわけじゃない。単なる嫌がらせだ。
嫌なヤツへの対処には古典的手法として雑巾水を混ぜる方法があるが、匂いでバレやすい上に、うちのカップを汚してどうする。
やるんなら徹底的に…などと考えていたら、残念なヤツが来てしまった。
二度と来るなって昨日も言っただろ。




