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〈カレーではない何か〉が評判になるにつれ、我が家の周りを不審な人物がうろつくようになった。
騎士団長に話すと第3騎士団の見回り重点地域になった。家族の職場周辺もだ。ありがたいけどちょっと大げさだなと思っていたら〈カレーではない何か〉が無くなると騎士団の士気が下がるらしい。中毒性でもあるのかと疑ってみるが、私は二度と食べたいとは思わない。香りも味も嫌いな部類である。
うろついてるのはどうせレシピを知りたいどこかの商人か、金目当ての盗賊団だろう。近いうちに根本的対策をしなければ。
そんなある日、南方からの商人が尋ねてきた。いけ好かない感じのヤツだ。屈強な護衛が二人ついている。
用件は簡単に言うと南方への販路の拡大と王都以外での独占的営業権が欲しいという、めちゃ予想通り。
なぜ一度も会ったこともないお前に優遇しなきゃいけないんだ?小娘だと舐めてかかってるの丸わかりだよ。ざけんな!
詳しい話をしたいと無理やり家の中に侵入してきた。
とりあえず、自分の分にカップを置き、馬鹿商人の前に一つ、それと空いた椅子の前に赤いカップを置いた。順番が変?コイツ客じゃないしな。
勇者が北方に行ってる間暇だったから、専用カップを食紅に当たる木の実で染めておいた。3倍おいしいと勇者に評判のカップだ。
『護衛の分は不要です』
「もうすぐ来客がありますので」
にっこり。
お前の護衛は二人だろ。数えらんないのか、そうか、やっぱり馬鹿なんだな。
勇者が来なかったら、商人をシメる。勇者が来たら、商人と勇者をイジメる。さぁ、どっちだ?
わくわくするぜ。
来なくていいぞ、勇者。むしろ二度と来るな!




