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昼過ぎにまた勇者は現れた。来んなって言っただろ。
『ハム持って来たからドア開けて♪』
「ようこそ」
開けます。開けます。ドアくらいなら開けます。
「ありがとうございます。納品お疲れ様でした。では」
お土産を受け取り、ドアを指差した。こっちの用は済んだ。帰れ!
あ、ソーセージもある!野菜スープの予定だったけど、夕飯はソーセージポトフに格上げしよう。明日の朝食はハムエッグに決まりだし、ラッキー。
ん?まだいるじゃん、勇者。
「お疲れ様でした。お疲れ様でした。お疲れ様でした…」
帰れ、帰れ、帰れ…
『マリアンヌ?』
奥から声がした。
「はい?母さん何?」
『せっかく勇者様が持ってきて下さったんだから、それで夕飯作って、ご一緒して貰ったらいいんじゃないかしら』
ちっ
食堂に勤める母は昼間はこの時間帯だけ帰ってます。ちなみに父はお鍋とか台所用品を売ってるお店やってて、弟は叔父の畑の手伝い、妹は学校に通っています。
「だそうだが、帰るか?帰るか?忙しいだろ、勇者」
『いただきます』
勇者は満面の笑みを浮かべていた。
いや、帰れ!そして二度と来るな!