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日常生活は以前のように戻った。


問題は“以前のように”というところにある。

勇者ウザい。やっぱり王女に熨斗付けて渡せば良かった。勇者の好みを考慮したのが間違いだった。

あれから妹と友達になった王女に聞いてみたが、王族に勇者と合う年齢の独身女性は居なかった。考えてみなくても、王族ならこの国の適齢期までに相手が決まっているだろう。勇者の好みの年齢まで独身は有り得ない。当然、有力貴族も同様だ。

となると勇者好みの女性を貴族に仕立て上げて婚姻させるのがこの国に定住させる方法なんだが、その提案はできない。それなんて“私”だ。いつでも逃げ出す気でいる国にわざわざ縛られる気はない。

だいたい自由もお金も可愛い妹もいる生活から、不自由な貴族になる必要なんてない。ノブレス・オブリージュで縛られるなんてまっぴらごめん。

あ、そうそう。街の子供たちを苛めてた貴族はなんだかんだと他の不正ならなんやらの発覚により爵位剥奪、不正蓄財没収に加え、多大な罰金で生活が一気に落ちた。でもまだ王都には居るらしい。地方に飛ばすとそこで何をしでかすかわからないから、一番監視の目のキツいところで生かさず殺さずらしい。意外と怖いな。名前出てるから、貴族社会から完全にハブにされただろうし…あ、もう貴族じゃないからハブも何も無関係な人たちだわ。


全然関係ないけど、フグの毒は神経毒のテトラドトキシンだけど、ハブの毒はなんだっけかな。タンパク質分解酵素?この疑問を覚えてたら後でゆっくり思い出そう。きっと忘れるが…。忘却力には自信がある。


とにかく義務を放棄して有りもしない権利を主張したヤツらの末路なんて知らんわ。権利と義務は表裏一体、義務を全うしての権利だっつうの。私はその義務が面倒だから権利も要らん。

ってか、服一枚をとっても貴族は面倒だと思う。季節にあってりゃいいじゃん。



『マリちゃん。アンジェリーク叔母さんから聞いたんだけど、そろそろロッティが帰ってくるんだって。おいしいお土産ないかなぁ』

勇者、何遍も言うが2人は私の親戚だ。

「従姉さんは仕事だ。旅行じゃないからお土産などない」

『お土産探してくれるって言ってたもん』

25才男性の勇者が“もん”って語尾で話すとマジ苛つく。いや、同じ25才男性でも可愛い系の顔立ちならまだ考慮の余地がある。残念ながら勇者は正統派イケメン系だ。…と思う。イケメンの定義が時代や地域によって異なるので自信はない。

そもそも私はかなり意識しないと顔の認識が非常に悪いので、イケメンの定義うんぬん以前かもしれない。それでもまぁ、他人を認識しなきゃいけない時もあるわけで、自分の生きていた時代のイケメン像はある程度はわかっているハズだ。

顔で評価するのが悪いとは言わない。雄が姿で雌にアプローチするのはクジャクの羽と変わらない。遺伝子を残そうというアピールなんだからそれに乗るのはある意味正解だ。

ただ、私としては強さや頭の良さに重きを置いているから外見に興味がないだけだ。そもそも他人に興味ないだろと言われると否定できないところが何とも…。


『お米とか里芋とかトマトとか見つけてきてくれると嬉しいなぁ』

「里芋好きだったの?」

『うん。お祖母ちゃんの作った煮っこがしとか』

焦がしてどうする。焦がさないように転がすんだろ。


『あとトウモロコシと、納豆と……』

「納豆は要らん」

『日本人なら毎朝納豆ご飯だよ』

「いばらき県人かっ」

『日本人なら味噌汁も欠かせない』

「要らんわ」

『納豆、味噌汁、漬け物が朝食の三種の神器』

「チーズ、レバーペースト、スープだろ」

『マリちゃん。日本人らしくない』

「だから、王都生まれの王都育ちだって言ってんじゃん」

『せっかく同じ日本から来たんだし、いいじゃん』

「ヤダ」

『マリちゃん。ヒドい』

と言いつつ勇者はもやしのスープを飲んでいた。

おかしいな。前はこれで泣きながら帰ってったのに、慣れちまったか。

私もこの状況に慣れつつあるのが怖い。

ってか、腹が立ったから勇者帰れ!二度と来るな!

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