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翌朝、伯父から〈デーデ〉が来た。〈デーデ〉が使えるのは父の家系だ。母方の親戚には使えない。父の祖先が恩でも売ったんだろうか?ケンカを売った方がありそうな話か。



家族全員で待ってると連絡通りに昼過ぎに伯父が客を連れてやってきた。水色のワンピースを着た金髪キラキラの少女と白髪ではあるが矍鑠とした老人、それにお供と見られる人が何人か。

ざっと全員を眺めた後でもう一度少女(・・)を見た。


…あり得ない。


前回は認識していなかったその事実に気付いた。


そして勇者が恋愛対象として考えられなかった理由の一つがわかった。

多分、成人してるんだろう、この国では。だけど、勇者の認識だと子供だよね。16?17?そんな感じ。適齢期の王族をって考えたのが裏目に出たんじゃないかと思った。

この年齢差は、勇者が35才なら無しではなかったと思う。35才と26才…うん、OKだろ、多分。勇者の射程圏はわからないが。

95と86なら一割以下だし、誤差範囲な気がする。あくまでも気がするだけだが。でも、25才に16才は微妙だろう。しかも出会いは3年前?成人男性が13才を恋愛対象だとしたら、日本ではちょっと問題だよな。いや、犯罪にならない“想い”までは止めないけど。手を出したらアウトだ。

ああ、そうだ。騎士団のロリコン達をシメとかないとな。妹はまだ未成年なんだぞ。恋愛対象として見ることすら禁ずる。


そういえば、王女の年齢って正確にはいくつだっけ?誕生の時に何かお祭り騒ぎがあった気もするが、記憶にない。16才だとして私は6、7才。うん、絶対覚えてないわ。毎年やる国王の誕生祭も直前になるまで忘れてるくらいだもん。



『突然の訪問を快諾してありがとうございます』

老人が頭を下げた。

割と自由な国とは言え、貴族が平民に頭を下げるのは珍しい。ってか、身分制度は厳格にあるよな。いくら私が世事に疎かったとしてもそこは間違いない、と思う。


『今の謝罪は訪問に関するものだけですよね』

父の追及が厳しい。妹がケガをしたことに関しては別問題というわけだな。当然だ。


『当然です』

老人は頷いた。

『度々外出していたことを知りながら、主君筋の若者の暴走を止められなかった責任は私にあります。申し訳ありません』

再び、頭を下げた。

続いて、水色のワンピースを着た金髪キラキラの……ぶっちゃけてお忍び姿の王女が頭を下げた。

『じいの責任ではありません。私が傍若無人に押し掛けて、いたいけな少女にケガをさせたのは揺るぎない事実。謝罪で済まされるハズもないですが、せめて一言お詫びを…』

『ヤダ』

我が弟ながら見事なKYぶった切り発言だ。

『俺のかわいい妹にケガさせといて謝りゃ済むと思ったら間違いだ』

弟も我が一族、当然、妹大好きっこだ。……“こ”はないか。充分成人している。

『そこを何とか謝罪だけでも…』

『兄の顔を立てて顔を見せるのは許可しましたけど、息子がこう言ってますし……』

父も相変わらずだ。まぁ、私たちの親だしな。推して知るべし。

「謝罪に来るのも遅いし」

情報が集まるのが遅いのか、判断か、決断か…いずれにしても3日前には来ると思ってたよ。


『そこを何とか…私にできることでしたら何でも致しますので』

父が老人の方をチラッと見た。老人は真摯な顔で頷いた。

『私もできる限りの誠意を示したいと思います』


母が怪しい笑みを浮かべながら頷いた。

『謝罪することを許可します。但し……謝罪を受け入れるかどうかは我が娘ブランシュが決めます。よろしいですか?』

疑問文だが、決定事項だと言うことは相手にも伝わったらしい。二人とも頷いた。母の決定に逆らえる人はウチの家族には居ない。


『ブランシュ、お客様よ。降りてらっしゃい』

母が声を掛けると、妹が叔母に連れられてきた。

叔母を見て老人の顔が引きつった。リース商会を統べる叔母は商売上手で有名だ。この場にいるということは当然ガッツリ儲ける気だ。

叔母の目が輝いているところを見ると老人はかなりの高官らしい。伯父が連れてきたことから考えると宰相である可能性が高い。


『あ、王女様だぁ~っ』

毎日暇してた妹には楽しいイベントだったらしい。

『ドレス触っていい?』

キラキラした目で王女を…王女の服を見つめた。

『……服でしたら、いくらでも、触って下さい』

俯き加減でたどたどしく王女が応えた。

『ヤッター!』

妹は歓声を上げると『この間とはデザインが違うんだね』とか独り言をつぶやきながら、ベタベタと水色のワンピースを触りまくった。

『…この間は叩いてしまって申し訳ありませんでした』

妹の手が止まらないので、身体を動かせない王女が声を掛けた。

『うん、ちょっと痛かった』

妹の言葉に部屋の空気が3℃くらい下がった。比喩的な意味で。実際に3℃下がるんなら原理を追及しなければならないな。


『申し訳ありません。大変子供じみた行いだったと反省しております。許しては頂けないでしょうか?』

妹が服を触りまくっているので、邪魔にならないように王女は頭だけを下げた。


妹は手を止めて、小首を傾げた。…………超かわいい。


『皆が納得したらね』

私たちの方を見て、笑顔で言い切った。

老人と王女の顔から血の気が引いて青くなった。

うん、搾り取る気満々の家族+叔母だ。遠慮は要らないよね。

わざわざ伯父と一緒に来たってことは、かなり困った事態になってるってことだ。長引くと被害も増えるよ。


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