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今日も寒い。

間もなく雪が降るだろう。


王都は雪が少ない。しかし一度雪が降れば、何日も融けないので流通がマヒする。

雪が降る前に決着させなきゃな。面倒くさい。


久しぶりの外出先は、第2騎士団だ。騎士団長自ら、例の騒ぎについて話を聞きたいと言われていた。頃合いもよくなったと出掛けることにしたんだ。


弟妹は留守番。一人自由に散歩を兼ねてちゃんと玄関から出た。さほどウチから離れる前に尾行に気付いた。気配とかちゃんと見極めないと父にどやされる。普通町娘にそんなスキルは要らないハズだが、危険察知能力は高いにこしたことはないので頑張った。おかげで多分、前世より危機回避率は上がった。ハズだ。回避したので危機だったかどうかわからないのが難点だ。加えて勇者に引っかかってる時点で怪しいとは思うが、察知して回避しようと頑張ったハズだ。チートバリバリ相手に一般人の危機回避で対処できるハズもない。

勇者に見初められた?=天災に遭遇した、に近いに違いない。天災を回避するなんて一般人にはムリだ。


で、第2騎士団本部で事情聴取ってか、ちょっと尋問に近い聞き取り調査をさせられたんだけど、なにぶん「覚えてない」最強!

貴族っぽい相手が怖かったと言って閉じこもり、忘れた頃に………いや、マジに忘れてる。これ、記憶力に問題がある私にしかできない必殺技。

騎士団での事情聴取では、宣誓させられる。この宣誓は絶対だ。嘘はつけない。だったら、忘れてしまうに限る。

こういう一時的ではあるが絶対的なものがありながら、王族への絶対的敬愛のない世界は、割と自由だ。いや、リース商会とかに勤め始める時にやる〈契約〉あれはヤバい。費用がバカ高いのと両者の合意が絶対条件なので、普通はやらない。


今、私が覚えてるのは貴族っぽい相手に妹が傷つけられたという事実だけ。

どんな人でしたか→覚えてません。

何人でしたか→覚えてません。

なんと言われましたか→覚えてません。

どういう状況で…→覚えてません。


普通の庶民は貴族が押しかけて来た段階でパニックだ。間違えて、〈カレー〉粉を10倍入れちゃったりするくらい。そういえば、あの〈カレーではない何か〉って私のイメージするカレーと色々違うのはどうしてだろう。どこがどう違うかを聞かれても、よくわかんないんだよね。前世でカレーを食べ慣れてなかったけど、違うってことはわかる。そこまでだ。まぁ、料理経験がほとんどない、料理の知識もほとんどない人が簡単に再現できたら、商売上がったりだ。

アチコチの業者が〈カレーではない何か〉を再現しようと頑張っているみたいだが、たとえ再現できても費用の面で折り合いがつかない。

いや待てよ。誰かがカレーの配合に成功してレシピを独占したら、勇者がソイツに引っ付くに違いない。

………問題は誰が猫の首に鈴を付けるかなんだが、カレーの味がわかっていて、なおかつ配合できる………居ないな。

召喚でも転生でも迷い込みでもいいが、元の世界または類似の世界から来なきゃムリ。その確率を計算するにはデータが足りなさ過ぎる。普通に考えると、有り得ないレベル。

だとすると、転生した私と召喚された勇者がほぼ同じ世界から来て、別の世界で会う可能性は…………ヤダな。

そこに必然とか意図とか要らない。

勇者と私が同年代とか怖すぎだ。

〈神の見えざる手〉は経済学の用語だと思うけど、見えざる誰かの意図がある気がする。気のせいだ。考えちゃいけない。



『マリアンヌ嬢?何か思い出しましたか?』

「いえ、全く……」

思い出そうともしてませんでした。


『それで妹さんは…』

「今日も可愛かったです。出掛けるって言ったら心配してくれて…あ、お土産買って帰らなきゃ。そろそろ出ないと暗くなっちゃう。暗くなる前に帰るって弟に約束したんですよ。妹があんな目にあったから弟がうるさくて、そうそう、弟ってば妹が心配だからって仕事休みっぱなしで、さすがにマズいとは思うけど、叔父も妹に甘いから…で、帰っていいですか」

騎士団長の言葉を遮って一気にまくし立てる。父の店の常連客の真似。これやられると思考能力奪われるよ。


騎士団長が迫力負けして頷いてのを確認して立ち上がった。

「では、二度とこんなことが起こらないようによろしくお願いします」


私の家族は被害者で、誰も変な噂とか流してない。広めようにも当事者に記憶ないからな。

噂は広まるうちに面白おかしく変容するもんだ。それを利用していないとは言わない。

身から出たサビなんだから、国の方で何とかしろ。難しいがな。

で、騎士団本部なんて二度と来るかっ!

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