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『マリちゃん。街の噂でブランちゃんがケガしたって聞いたんだけど、大丈夫?』

勇者が飛び込んで来た。

お前は妹がケガをしたその日に会ってたよ。心の中でつぶやいた。


「王女様に扇子で叩かれたの」


ウソではないが、本当とも言い難いレベル。いや、叩かれたのは本当だ。問題はケガの程度か。噂に尾ひれが付いてしまったのは知っている。曰わく、『王女様が子供を殴って大ケガを負わせた』。訂正する気はない。


貴族様ににらまれた庶民が対策で一時的に引きこもることもたまにはあると聞く。権力を握ると勘違いする阿呆は少なからずいるからな。

今回引きこもったせいでケガが重いと世間が勘違いするのは、我々の責任じゃない。不幸な巡り合わせだ。



「今、叔母が来てるから…」


これを危篤ととるか、暇つぶしととるかは自由である。想像力を縛る気はない。

弟は階段下に控えていて、2階には家族親戚以外は上げない。元々プライベートスペースだから、当然である。しばらくは勇者も妹に会わせない。ただそれだけだ。


『大丈夫なの?』


心配そうな勇者に曖昧な微笑で返した。肯定も否定もしない曖昧さ。そこが重要。後からいちゃもん付けられても困る。


『心配して急いで来たらお腹空いちゃった』

安定の食欲魔人ぷりだな。

しかもそれって安心してから空腹感になるのが普通じゃ………勇者だしな。変に納得した。


何か食べたいと言う勇者を無視してお茶を飲んでいたら、第2と第3騎士団の変態が連れ立ってやってきた。妹に懸想しているヤツらだ。ロリ二号が居ないが、今日は仕事かな。


『『ブランちゃんがケガをしたって聞いて!』』

息を切らせているし、この季節に汗をかいてるってことは走って来たな。


「今、叔母が来てるから会えないよ」

多分、新しい服の打ち合わせ中だから、殿方の出入り禁止だ。まだ小さいとはいえ、下着姿を異性に見せるわけにはいかない。


『誰にやられたんですか?』

「水色のワンピースを着て、護衛を引き連れた人」

『…水色』

さすが騎士団、思い当たるらしい。ってか、水色が好きなのか、お忍び服は一枚だけなのか、まさか、トレードマークとして同じものがクロゼットにずらっと並んでたりして…。


『…なぜ?…ここに……』

「勇者が来るから?」


首を傾げてみる。実際何を考えて来たのかはわからない。

見知らぬ人からちょっと声をかけられたくらいで、引くと思われたんだろうか。忍んでるフリして忍んでないつもりなのか。まぁ、明らかに王侯貴族のお忍びだったけどな。暗黙の了解とかニュアンスを求められるのは苦手だ。

そもそも、付き合ってないというのに。


『勇者様!帰って下さい!』

『ブランちゃんがとばっちりで…』


2人が勇者を責める。本当のところ悪いのは、妹にケガをさせた王女である。そこに異論は無い。無いがきっかけを作ったのは勇者であるし、何よりウザいのだ。これを期に来なくなってくれたら一石二鳥。


うん。王族への今までの鬱積はもちろん熨斗をつけて返却する。


『誰にケンカを売ろうとしたか、思い知るがいい』


と、父が言ってた。

温厚そうなのがフリなのはわかってたけど、もしかしたら父はヤバい人なのかもしれない。



『妹を傷ものにしてタダで済むと思うなよ』

弟がヤバいのは知ってた。戦闘狂の血が騒いでるらしい。

この間、発散させたのかと思ったら、まだ高揚が続いていたらしい。


『建材とか仕入れなきゃね。商人の血が騒ぐわ』

見当違いの方向に叔母と盛り上がっていた母を止める気はない。いや、母親ほど強いものはないのは定説だろう。父も母には頭が上がらない。その前にラブラブだけど。


個人的には妹たちとの平和な生活が取り戻せたらいいだけだ。そのために邪魔なものはたとえ国家権力と言えど、如何なる手段を用いても排除しよう。

先に手を出したのはアッチだ。問題は単なる町娘だから使える手段は限られることか…。でも、権力には義務がつきまとうから面倒で欲しくないし、町娘の地位は捨てがたい。この国、庶民は意外と自由なんだよね。そこは評価ポイントだ。



勇者はチート過ぎて排除しにくいのが難点なんだ。妹も懐いてるしなぁ。

とりあえず、ロリコン2人に便乗しとこ。

「勇者、帰れ!二度と来るな」

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