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夕食後は家族会議だ。
妹がケガをしたので、家族全員怒っていた。妹のかわいい手は扇子の骨が当たってミミズ腫れになっている。
大事な妹を傷つけやがってと怒りを感じる相手は、ケガをさせる前は興味がなく、コトの後には妹しか見ていなかったので全く記憶にない。
弟は私のそんな状態を『姉貴は人間に興味無さすぎて変』と言う。ちょっとだけ人間に関する認識が悪くて記憶されにくいだけで、何回も会う人は覚えられることもあるのにヒドいと思う。覚えらんない場合もたまにはあるが…。
でも、弟が私のことを考えていてくれるのは嬉しい。愛情の反対は無関心と誰かが言ったらしいけど、弟の関心が私にもあるのは幸せだ。その論理を突き詰めると、私の愛が兄や勇者にも少しはあることになるのが問題だが、そこは無視しよう。
会議の最初は現状の把握だ。
『で、それは王女様で間違いないのね』
「近所と勇者がそう言ってた」
井戸端会議に参加してきて、直接聞いてきた。
『なら大丈夫ね』
おかしい。母親からの信頼が絶大なんだが、近所と勇者の証言が。『私はアテにならない』ってコトか。いや、私も自分の人の認識を信じてないのは一緒だけど、釈然としない。
『とりあえず、常連さんには娘が貴族っぽい人にケガをさせられたみたいだから早退するって言ってきたわよ』
『商業ギルドでボヤいてきた』
『叔父貴に伝えたよ。で、姉貴と妹の護衛でしばらく休むって』
『ねぇ、ホントにしばらく学校休まなきゃいけないの?』
「外は危ないから、私が勉強教えるよ」
『アンジェリークもお見舞いに来てくれるから寂しくないわよ』
『あ、あの素敵なワンピースみたいなの欲しいなぁ』
「多分オーダーの一点ものだし、ブランシュに合うデザインの方がいいんじゃない?」
『叔母さん作ってくれるかな?』
『どんなのにするか考えておいた方がいいよ』
『青より白とかピンクが似合うと思うな』
『太陽のような黄色もいいんじゃない?今は日差しが少ないから明るくなるようなの』
「ブランシュの方が可愛い」
可愛すぎて攫われると困るから、家の中で着ること推奨。
我が家は今日もマイペース。手は打ったから、後はしばらく様子見。
に、してもだ。
勇者のおかげで妹が迷惑を被ったのは間違いない。
二度と来るな!
………明日も来るんだろうなぁ。




