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『マリちゃん、こんちゃ』

勇者は今日もやってくる。

『冬って言ったら、白菜の漬け物だよね』

時候の挨拶が食べ物かよ。

「私が漬け物で食べられるのはピクルスだけだ」

『……マリちゃん。漬け物は日本人の心だよ』

「王都生まれの王都育ちに日本人の心があるハズもないし」

『前世…』

「記憶があるだけだし、前世も漬け物食べてないし」

『なんで前世も食べてないのぉ?』

「親が漬け物が嫌いだったから、食卓に上らなかった」

『前世のマリちゃんの親はやっぱり日本人じゃないんじゃ…』

「いや、バリバリの日本人だったって」

父親の方の家系図は戦国時代まで遡れるぞ。もちろん母親も生粋の日本人だ。

「ついでに私は塩辛いのは苦手だった」

『だからマリちゃんが作ると味が薄いんだ』

調味料が高いってのもあるがな。もちろん、今はスパイスに限って言うなら専門の業者がいる。叩きまくった挙げ句にリース商会にまで納入させたが、家で使用する分は個別に納品させている。そろそろ旨味も与えてって思うが、リース商会任せで放置だ。

塩はリース商会から個人的な使用分は只で貰っている。塩の精製技術の伝授の見返りの正当な報酬だ。

だからと言って、私の味覚が変わっていないので、特に使用量が増えたわけではない。元々、困ってなかったしな。


『マリちゃんが漬け物が苦手でもいいから、白菜漬けてお願い』

「勇者」

大きくため息をついた。

「今まで何回となく言ったけど…」

『何?』

この鳥頭め。

「まず、白菜を探せ!食べたいなら自分で作れ!そして、自分ちに帰れ!」

一気にまくしたてた。

『白菜無いの?…そういえば、鍋やるときも入れてなかったね。なぜか鍋が寂しい気がしてたのはそのせいか』

いつもいつも思うんだけど、食べたいならまず材料を探せ。そして今頃無いことに気づくな。ああ、コイツのことだから白菜の漬け物に白菜が必要なことがわからんかもしれない。

突き抜けた思考の持ち主だしな、と勝手に結論づけた。


『………マリちゃん……キャベツでできるかな?』

「白菜の漬け物がか?」

『…やっぱり、ムリかな』


マジ突き抜けてた。

ものすごい虚脱感にいつものようにカップを投げつけられなかった。

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