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結局、勇者はベロンベロンになるまで酔っ払って帰っていった。

私はすぐにでも帰って欲しかったんだが、家族と神官が引き留めた。傷だらけの二人は痛みに耐えながらも、消毒だと浴びるように飲んだ。そのまま仲良く朝の鍛練をして完全に酔いが回って寝ている。


連絡した時、叔父が戦闘狂モードになったなら一週間くらい休む予定でいるよって言ってくれて助かった。母方なのに慣れすぎだよ。同僚の人たちも『エリックが燃える相手も珍しいねぇ』って何言ってんだか。弟が勤め始めた頃、侵入してきた盗賊団を壊滅させたのが伝説みたいになってるらしい。

兄のルネはこの界隈では伝説だ。壊滅させた盗賊団は一つや二つじゃない。私に何かあってはいけないと、ちょっと離れた地区まできれいサッパリにしたみたいだ。この界隈で犯罪の下見をしたヤツは二度と出られないという怪談めいた話は兄が元凶だ。兄が出て行った今は、多分、父が一役買っている。台所用品店経営なんて優男のフリして、母に甘々で、時々 ご近所清掃活動を一人または弟とやっている。それには決して他の家族を連れて行かないが、暗黙の了解で着いて行こうともしない。


『マリちゃん、おはよー』

朝っぱらからか。

「他人んちを訪ねるには程よい時間というのがあってな」

『とっくにマリちゃん起きてるの知ってるし』

「朝ご飯食べてんの見えないか?」

『僕にもパンとスープ下さい』

「そっちかっ」

カッコーンと間抜けな音がして、今日も勇者専用カップはヒットした。

「お前にやる朝食はない」

『うーん、見事に当てますね』

『神官様、おはよー』

『おはようございます。マリアンヌさん、勇者様』

神官が食堂に入ってきた。

「おはようございます、神官様。朝食食べる元気ありますか?勇者、お前は帰れ」

『清々しいほどに態度を違えますね』

「一応 弟の客と、押し掛けてきて朝食をねだるヤツ。態度が違うのは当然」

『……一応…』

『マリちゃんはこの清々しさがいいんだよ』

「一応でしょ?勇者が間違って連れてきただけで」

勇者の発言は無視する。

『これでも、かなり高位の神官なんですが…』

「いや、だって、私、その宗派に入ってないし、魔法使わなきゃ弟とどっこいどっこいの強さだし」

『貴女の弟が強すぎるんです。なんでそれで農業やってるんですかっ。騎士団か冒険者が妥当でしょう』

「一次産業舐めんなよ。食料の供給が大切だ。それに騎士団はカスレで兄がいるからいいんだよ」

『暴れ牛でしたか。あの人が暴走しだすと災害扱いですね。それが基準とか…』

「災害ねぇ。一発で止められるけど」

『はい?』

「『そんなお兄ちゃんなんて嫌い』って涙ながらに言ったら固まってしばらく復活できないよ」

神官は勇者に視線を投げかけた。

『あ、うん。きっと止まる』

「はぁ?」

『それで止まんなきゃ、お義兄さんじゃない』

神官は呆然と突っ立っていた。それより食欲があるなら座らないかな。

まだ起きないと思って一人で食べてんの気まずいんだけど。


あ、勇者の分は無いから帰れ。

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