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ドングリは種類別に分けてから殻を取って、渋皮を剥いて……暇つぶしに最適だわ。

ドングリを潰そうと荷物の中から乳鉢を取り出した。

『それわざわざ持って来たんですか?』

剣士さんも魔術師さんも私に対しては丁寧な言葉使いをする。私がくだけた口調で話すのに、仕事だからと譲らない。でも、2人で会話してる時には元冒険者らしい言葉が出てくることがある。

リース商会に勤めた時の研修で徹底的に教育されたらしい。従姉主導の研修……怖すぎる。やっぱり間違ってもリース商会には勤めないことにしよう。


「こんなこともあろうかと持って来ました」


本当は瑪瑙の乳鉢欲しいんだよね。焼き物でもいいんだけど、残念ながら木製。主に値段と技術力の関係で。

磁器なんて見たことない。陶器は高いし、荒いし、割れるし。木製が一番。堅い木を選んで作って貰ってるから、ちょっと加工賃が高い。しかし、石で作ったのよりは安いし、軽いから父の店にも出してる。

乾燥ハーブでお茶を作ったり、少量の小麦を製粉したり(大量に使う時は小麦粉を買ってくるし、そもそも小麦高い)、めったには買わない貴重なスパイスを混ぜたりと便利なんでいくつかのサイズが用意されている。


で、大中小と持ってきてたんだけど、一番小さいのを使って剥いたドングリをつぶし始めた。

一個をつぶしたところで口に入れた。

一番苦くないやつかな。

全種類を一通り味見したところで種類別にあく抜きの方法を決めていった。


『どんな味なんですか?』

魔術師さんが止める間もなく、一種類を口にして、すぐに吐き出した。何かに耐えるように顔をしかめたまま身動きもしない。

飲み頃に冷めたリンデンティーを渡すと黙って一気飲みした。

「ソレ一番ヤバいやつ」

『……早く言って下さい。マリアンヌさんが口にしてたから大丈夫かと…』

恨みがましい目で睨まれた。

「父に色々味見させられてて慣れてるの」

サバイバル体験とか町娘には不要だから。王都に住んでる限り、ドングリを食べる羽目には…好奇心旺盛な妹が居なければ…ならないだろう。


ってか、勇者が戻って来る前にあく抜き終わるのかどうか怪しくなってきた。まあ、いいか。当日ある材料で作れば。暇つぶしがメインな作業でアイツの為じゃない。苦いのができようと食べてもらえばいいだけで。

成功しようとしまいと騎士団にあまり迷惑をかけなければ………かけてもいいか。よく考えたら、連れて来られて迷惑かけられてた。

大切な家族がいる以上、国から売られたケンカを買うのは得策ではない。ってか、欲しくないものを買うのは嫌い。のらりくらりとかわしつつ、こちらに明らかな非が無いような感じでチクチクと………それでもケチをつけようとしたらできるのがこの国の王なんだよね。そんなことされそうになったら、さっさとこの国から家族ごと消えるだけ……妹が友達と仲がいいからそれを最初に勇者が現れた時に避けたのが失敗だったかもしれない。

私には友達なんかいない。交友関係はことごとく、兄に潰された。ってか、皆引いてしまった。18になれば結婚してない方が珍しいこの国で22にもなって相手すらいないのもそのせいだ。もちろん、結婚に興味がないのもある。

しかし、兄がカスレに行った今でも仕事を除くと、一定以上私に近づくのは家族以外居な……勇者か、勇者なのか…。


ああ、思いっきり苦いの作って、勇者が二度とウチに来たくなくなるのもいいな。

ってか、来るな!

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