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翌日出かけたのは勇者とすー君ら数名。騎士団長は残った。こうやってメンバーを少しずつ入れ替えながら訓練していくらしい。

ん?訓練………つまり単なる実地訓練ってことかな。魔王が倒されて騎士の練度が下がるのの防止とか?まぁ、いいや。どんな理由でも関係ないし。問題はそこじゃなくて、訓練に駆り出されたことだ。魔物の討伐だからって泣く泣く妹から離れてこんな山奥まで……奥まではまだあるか。ここを山奥と言ったら集落に住んでた人に悪いよね。


訓練でも討伐することに変わりないし、ここの討伐が済んだら山向こうの国と交易が復活するからいいらしい。そしたら、この集落にも人が戻ってくるだろうって、そうだな。騎士団なら国益優先か。


勇者曰わく、魔王が倒されたら終わりで、魔物も居なくなると思ってた。意外とその後が時間かかるんだなと。

何だ、そりゃ。

物事は終わった後の片付けが一番大変なんだぞ。ラスボス倒したら、めでたしめでたしじゃないだろ。ああ、おとぎ話はそんな感じか。


騎士団長によると勇者を召喚してから魔王を倒すまでに5年、倒してから10~15年くらいかけて魔物の数を減らすのが通例らしい。森の奥とか岩穴とかに残るので、全滅は難しいらしい。

殺菌は比較的簡単だけど、滅菌は難しいってことか。紫外線殺菌だと陰になった部分に残るから、そんな感じかな。


まぁ、今回もそうだけど、山の中とかに潜む魔物を減らすのは大変だよね。だから時間をかけるのはわかる。わかるんだけどさ、理解と納得は違う。

毎朝のおはようからおやすみなさいまでに何回妹の笑顔を見られると思ってるんだ。まして妹はまだ小さい。今年の笑顔は今年しか見られないんだ。来年の少し大人びた笑顔じゃなくて、日々少しずつ変わる今を楽しみたい。

物理的な力では騎士団長にはかなわないし、権力では国家にはかなわない。庶民にできることは密やかに抗うだけだ。


『マリアンヌさん?』

魔術師さんが不振そうな顔で声をかけてきた。

『ドングリ拾いそんなに楽しいですか』

いつの間にか笑顔になっていたらしい。

「楽しいですよ」

ドングリってタンニンが多くて苦いんだよね。ちゃんとあく抜きすれば食べられるんだけど……思い出した。子供の頃、一度作ったわ。ドングリの種類が最悪で、あく抜きがいい加減だった上に焦がして………家族で1人だけ美味しいって言って食べてた。シスコンもあそこまでいけば立派……でも、つきまといは迷惑だよ。


『コレって本当に食べられるんですか?』

「…頑張れば」

『頑張らないと食べらんないものを食べるんですかっ?』

「大丈夫。水に溶けるから」

『…何が?』

「秘密」

タンニンなんだけど、説明するわけにもいかないし。水溶性だからちゃんとあく抜きすれば大丈夫。なんだけど、子供の頃に失敗した苦味の取れにくい種類のドングリも混じってるよね、これ。


騎士団長にはほんの少し苦めのものをあげようとか考えて…ない…こともない……。

まして、それを食べた表情を想像して笑みを浮かべたりしてない……ことも………。


良い子は真似をしないようにね。

種類を間違えなきゃ多分大丈夫だから。

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