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今日もやっぱり退屈な馬車旅。クマのせいで狩りへの参加は見送られた。倒したの私なのに、危険だからってイミフ。
それに最後は馬車を置いて行くんだよね。今守られてても結局後で無防備になるよね。まぁ、危険なのをできるだけ短くしたいのもわかるけど………暇なんだよ。
馬車に閉じ込められてじっとしてると深部静脈血栓症になりそうだから、時々足とか動かしてる。家にいるとなんだかんだと動くから考えなくていいのに面倒だわ。まぁ、揺れるからほっといてもそこそこ動かすことは動かす。
『勇者様って王女様と婚約するって噂がありましたよね。一緒に旅してて仲良くなったんじゃないですか?』
魔術師さんが話を振った。
『一緒に魔王討伐に出たけど………仲良く…?』
勇者は首を傾げた。
『噂になってたんだからラブとはいかないまでもライクな…』
『うーん。日本に帰る気だったから全く意識してなかったです』
『それで婚約の噂になるの?』
『何ででしょ?』
国家戦略だからな。勇者の籠絡。他国に行かれるくらいなら王女と結婚させて手元におくだろう。勇者には言わないけどな。
だいたい今は私を足枷にこの国に留めようってのが気に食わない。私は権力に取り込まれずに自由に生きたいんだ。知らん町娘に頼るより、もっと自分の娘押せよって王に言いたいわ。だからと言って直接会う気はない。
「今からでも遅くないから、王女様を選べや」
寝たふりしてたのに、つい本音がこぼれた。
『ええっヤダ。なんか王女様って肉食系?それが合わない』
『お肉をガツガツって感じなんですか?』
『うん。骨付き肉を手で持って噛みつくんだよ』
魔術師さんと剣士さんがきょとんと顔を見合わせた。
『それがどうか?』
『私もやりますよ』
『だって王女様だよ。手掴みで肉をガッツリなんて…』
勇者…それ肉食系じゃなくて、単なる肉食だから。
『野営で焼いた肉とかガッツリ行きます』
剣士さんがいい笑顔で宣言した。さすが元冒険者。従姉の相方と同じパーティで稼いでいただけのことはある。
『野営の時はいいんじゃない。いつでも手掴みだよ』
『…それ普通』
『骨付き肉は手掴み以外どうしろって言うんですか?』
『肉の塊なら骨付きじゃなくてもかぶりつく』
食文化の違いってヤツかな。
勇者がこっちを見た。
「ウチの食卓に骨付き肉が出ることは基本的にない」
『毎日スープだ』
「スプーンがあれば足りる。お前がうるさいから特別に箸も用意してやってる」
『…あれ…?』
「母んとこ(食堂)でもお前が来たら無条件で箸を出すようにしてあるぞ」
『…あれれ?』
「勇者誤解の取れた今こそチャンスだ!王都に帰ったらすぐに王女を捕まえるんだ!」
で、二度とウチに来るな!




