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馬車に揺られてる。
第3騎士団には女性がいないので、急遽リース商会から剣士さんと魔術師さんが参加している。独身の女性が一人で騎士団とはいえ男性のみと一緒に出掛けるわけにはいかない。馬車という密室の中で、馬に乗れない勇者と2人っきりってわけにはいかない。の、常識をクリアする為にリース商会から派遣です。
馬車の中が女性3人に勇者1人のハーレム状態はOKなのは謎だ。勇者じゃなくて単なる騎士ならこの3人で勝てると思うんだが、肉食系女子はいないという前提条件でもあるんだろうか。
今回の2人の派遣費は国持ちらしい。カスレ往復は騎士団も含めてリース商会に押っつけたクセにどうした風の吹き回しだ。なんか問題でもあったかな?
それはともかく…
『マリアンヌさんとまたご一緒できて嬉しい』
『マリアンヌさん、可愛いし』
お二人の考えてることがわかりかねます。ブランシュの居ないこんなツラい旅……。
「騎士団の馬車って乗り心地悪いね」
道が悪いのかもしれないんだけど、道路の凹凸をよく拾って揺れる。
『リース商会の馬車は賢者様のおかげで乗り心地がいいって聞きましたよ』
そうなんだ。
『荷物が壊れにくくなったし、疲れにくいしってボスが』
「へぇ~っ」
記憶にない。全く記憶にない。けど、王都でちょっと乗って文句を言ったくらいなら残らんだろう。
『リース商会って賢者もいるんだ』
勇者が感心していた。
「らしいね。会ったことないけど」
板バネでも仕込んでるのかな。そんくらいなら作れるだろう。エアサスなんて贅沢は言わないから、騎士団の馬車も………騎士団って荷物が無きゃ馬で走るのか。そりゃ、費用対効果考えたら、安いのにするよね。
でもさ、ケガ人とか運んだりはしないの?だったら、これキツいんだけど。………騎士団の人たちなら馬で運びそうな気もしてきた。
『マリちゃん。お昼は何だろうね。楽しみだな』
勇者たまには食欲から離れようぜ。
「知らん」
『相変わらずのツンデレ』
いや、だからいつデレたか教えてくれ。兄も勇者も夢を見過ぎてる。
「そういえばお前は馬に乗れないのか?」
この2人の前では、もはや勇者への態度を隠す気もない。
『魔王退治の前に練習はさせられたんだけど、長時間はムリ』
『私は乗れますよ。馬車を置いたら、マリアンヌさん一緒に乗りましょ』
剣士さんが笑顔で手を挙げた。
山越えだとロバの方がいいかも。かの皇帝もロバで山越えしたらしいし。そういえば従姉の缶詰めの開発は進んでるんかな。
ってか、馬に乗った騎士団長のお供にロバに乗った勇者がついて、風車に向かって欲しいとかくだらないことを考えてしまった。あれ?私の騎士団長のイメージって………いや、多分勇者のイメージがロバ。適当に相棒を決めただけか。
ムリヤリ連れて来られたんだから騎士団長でこれぐらいの妄想は許されるよね。




