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暑い。すっかり夏だ。

この国にも四季がある。

冬は長く、太陽の出ている時間も短いので暗くて寒い。王都は山から吹き下ろす風が強くて、雪は少な目だが、降ったら融けにくい。

春はからりとした晴天が特徴的で、作物も育つし、過ごしやすくていい季節だ。

夏は暑い。フェーン現象でからっとしている熱風が吹くときもある。そんなに湿度が高くなくのがいいところか。王都周囲の森林があるために気温だって前世に比べたら決して高くはない。ただ、暑いのは苦手だ。

秋は実りの季節。森の恵みに感謝する祭りが行われる。人口の増えた王都では森の恵みだけでは維持できなくて、叔父のように大々的な農業を行うようになり益々の繁栄をみせてきた。

梅雨は無くて、四季を通じて雨量はそう多くない。伏流水が無ければ王都もそれほど発展することはなかっただろう。

文明が発達すれば生活水準は上がるけど、人口が増える分 食料の調達が問題になるし、環境破壊も進むし……とかいうことは実はどうでもよくて、今の一番の問題は暑さ。さすがにヒートアイランド現象とか問題になるレベルじゃないから夜は涼しくなるから眠れるんだけど、昼間がね。前世に比べたら格段に気温も湿度も低いんだけどさ、扇風機もエアコンも無いわけで。


「…かき氷食べたい」

たまにはこんなつぶやきも漏れたりする。

『マリちゃん、任せて』

勇者は言うなり、呪文を唱えて自分のカップに入れた白湯を空中に浮かせて、瞬間に凍らせた。さらにそれが削られ、深皿に盛られていく。


おい。なぜウチの食器棚の中身を勝手に出してるんだ?


『できた♪』

得意満面で勇者が言った。


「アウト」

一刀両断に切り捨てた。


『なんで?』

「氷に余計な気泡が混じらないように白湯を使ったはOK。衛生面もクリア」

『はあ』

「氷のかき方は未確認」

『…はい』

「一気に凍らせたはアウト」

『なんで?』

「井戸水には不純物が混じっている。通常かき氷用の氷を作る時にはゆっくりと凍らせる」

『…はぁ』

「不純物があると融点が下がるので、ゆっくり凍らせるとより純粋な水の部分から凍って、不純物は…」

『………マリちゃん。難しい』

「ええと。凍らせたジュースを溶かしていくと最初は濃くて段々薄くなるだろ?」

『なる、なる。キチンと溶かさないで飲み始めると最後薄くてマズい』

「つまり、後から凍った方が不純物が多いんだ。で、美味しい氷は不純物の多くなったのを捨てて新しい水を足しながら作るの」

『へぇ~っ』

「ましてだ。日本の水に比べたら、ここの水は硬度が高い。不純物の多い水をそのまま凍らせたらマズい」

『つまり、かき方以前?』

「その通り」

『まぁ、いいや。僕は食べる』

勇者は木の匙を手にして固まった。

『あっ!イチゴシロップが無いっ!』

私は氷水(こおりすい)が好きだから、作ろうと思えばできるけど、あのイチゴシロップは大変だぞ。

当然だが、協力はしない。色素だの香料だの作り方も知らない。生のイチゴを使ったシロップならできるかもしれんが、季節じゃないしな。

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