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ウチの朝は日が昇ると始まる。ランプの油がもったいないので、夜更かしは基本的にしない。日の出とともに起きて、日没後にはほとんど寝るだけになる。従って夏場は1日が長く、冬場は短くなる。

今は夏だからちょっとばかり早起きだ。白夜まではいかないから、めちゃくちゃ早起きというわけではない………と思う。かれこれこういう生活を20年ほど(乳児期は違うと思う。幼児期はわからないが)続けているので判断基準が間違ってるかもしれない。


起きたら中庭に集合する。ハーブを育てるために中庭のある家が欲しかったと言っているが、実のところ身体を鍛えるためである。ちゃんとハーブも育てているから嘘ではない。

育てたハーブは父の店で細々と売っているし、母が勤める食堂でも使っている。

とりあえずまあハーブも間違いなく育ててはいるが、中庭の一番の用途は身体を鍛えることであるってことで。昼間は洗濯物を干すにも使われている広くなったところで、筋トレや手合わせなどを家族でやるんだ。


中庭を手に入れるために王都の外れの方に住むことになり、父の店までの通勤距離はとんでもないことになっているが、足腰が鍛えられると喜んでいる。

もっと遠いのが妹の通ってる学校で、これは王都の広さに比べて学校そのものの数が少ないためである。可愛い妹にどんだけ歩かせるんだと憤りを感じるが、私が子供の頃はもっと遠かったらしい。


この早朝トレーニングは父の実家の習慣らしく、吟遊詩人が泊まっている時はさり気なく加わっている。母方の親戚が加わることはない。


最近は昼間一人で投げナイフの練習をしている。他人がいると危険なので、朝にはまだできてない。新しいナイフの癖を掴み始めたのでそろそろ昼間は止める時期かもしれない。誰かに見られるのは、得策ではない。



『マリちゃん、何やってるの?』

こうやって勝手に裏庭にまで入ってくるヤツもいることだしな。

「投げナイフでウィリアム・テルごっこしようか」

侵入者ににっこり笑いかけた。

『…マリちゃん。文章は疑問形なのに、何だか断定口調なのはなぜ?』

後ずさりながら勇者がこぼした。

「私の中で決定事項だから?」

『なんでそこで疑問符?』

「気にすんな」

『…いや、気になるし…』

気になるなら、帰れ!二度と来るな!と言おうとしたところで、勇者の腹が鳴った。

『マリちゃん。お腹空いた。朝から何も食べてない』

この緊張感の無さは何なんだ。

行き場のない怒りを込めて投げたナイフは真っ直ぐ的に当たった。

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