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アスパラ茹でてる。勇者が買ってきた分と弟が持ち帰った分。
昨日はテンパってたらしい。
最初っから弟に頼めば良かったのに、勇者に頼んじゃったもんだから、弟は対抗意識で大量に持って帰ってきた。
で、マヨネーズにフレンチドレッシングを作ったばかりか、これからアスパラベーコン巻を焼くことになっている。ベーコンは大量のアスパラを見た段階で勇者に調達してきて貰った。
足が早いものは美味しいうちに食べないとね。
今日は野菜スープもある。まあ、アスパラと一緒に用意した人参の切れ端とかそろそろ調理しなきゃいけない食材が入れてある。無駄にするほど裕福じゃない。何より可愛い弟の作った野菜を捨てるなんて許されない。
人参の葉っぱもスープの具材だ。
ウチの家族は野菜が大好きなんだけど、勇者は人参がキライっぽい。残すのは認めないがな。
『お姉ちゃん、この…まねね…美味しい』
『マヨネーズだよ、ブランちゃん』
『ん、それそれ』
『このマヨ前のと味違う』
勇者は一口食べて考え込んだ。食べ物に関してだけ鋭いな。
「カスレで作ったのは全卵で今日のは黄身だけで作ったから」
『白身は?』
「…スープに入ってるだろ」
お前の目は節穴か?節穴だな。今更だった。
かき玉汁風野菜スープが目に入らないのは、マヨネーズに意識を奪われてるせいか。ってか、こんなんで魔王退治大丈夫だったのか………力業って怖いな。
『勇者くん、この間と今日のどう違うの?』
母の中で勇者の呼び名は『勇者くん』に決まったらしい。
『…この間のは、あっさり系でいくらでも食べられるって感じで、今日のは濃厚でうまーって感じ?』
イミフなんだけど、勇者だから仕方ないのか。
『マリアンヌどっちのレシピも頂戴。お店で試すわ』
『マリアンヌ日持ちはどのくらいだ?』
両親ともに商売熱心で困るわ。
「日持ちはしない。レシピは明日の朝渡すね」
『販売するほど保たないのか…レシピは一度売ると再度はないからなぁ』
「とりあえず母さんに食堂で使って貰って反響見ながら、保存できるレシピを模索するとか?塩と酢を増やせば多少はいけるかもしれない。味はちょっと変わるかも」
『とりあえずオリーブオイルとビネガーを仕入れとくか』
「ってかさぁ、父さん。いつの間に本格的に食料品まで手を出すようになったの」
『乾物とか日持ちするもんだけだよ』
『乾物ならさきイカで良くね?俺アレ好きだな』
さきクラーケンだけど、イカでもいけるぞ。むしろイカが一般的だった。今はクラーケンが一般的かもしれないが…。
『アンジェリークに頼んどくわ。独占契約でいい?』
……母さん。
『食堂でマヨと一緒に出したらエールが売れるぞ』
『酔っ払いが増えても困るもん』
『それもそうだな。居座られて母さんの帰りが遅くなるのも困るしな』
そのままラブラブモードに入ったから無視で。
勇者も当てられたらしく、さっさとごちそうさまして帰っていった。
ついでに二度と来るな!




