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カスレから帰って変わったことと言えば、ごくたまに夕食に魚料理が出るようになったことだろうか。

基本的には元の生活に戻っている。


いつもの通りの豆のスープもあるが今日は特別。この季節ならではのご馳走を作っていた。


温かい方がおいしいので、家族が揃ってから茹で始めたホワイトアスパラである。

同時にできあがったポーチドエッグを載せて完成。


『マリちゃん、これお肉とか無いの?』

ってか勇者、なんでお前が居るんだ。当たり前のように食卓に着いてるが、誰が許可した?母か…。

「玉子があるから問題ない」

『昨日ベーコンとハム買ってきたじゃん。載っけたらもっとおいしいよ、きっと』

「ベーコンとハムには別の用途があるんだ」

他人ん家の夕食に口出すな。貰ったからにはウチのもんだ。


『マヨネーズもいいかも』

『マヨネーズって何?』

アスパラを食べながらつぶやいた勇者の言葉に妹が反応した。

『黄色くて、とろっとして酸っぱくて…』

相変わらず表現が下手だな。そうか、コイツ料理のこと何も知らないから材料とかわからないのか。


『野菜に合うし、さきイカにも合うし…』

『さきイカってあのクラーケンのつまみか?』

弟も興味を持ったらしい。

『カスレでマリちゃんが作ってくれたんだ』

誤解を招く言い方だな。試食会で出しただけじゃないか。

『お姉ちゃん』『姉貴』

だあーっ!二人のその期待の視線に適うわけない。

「……今度作る。勇者、新鮮玉子と食用油とビネガーを用意して。グリーンアスパラも」

『了解!アスパラは緑の方が好きだから楽しみだな』

「ホワイトアスパラならポーチドエッグ乗せが好きなの。緑のはそのままで」

『そのまま?』

「茹でるだけ」

『マリちゃんって素材感が好きだよね』

「変に味付けされるとかえって食べらんない」

『フランス料理よりイタリア料理みたいな?』

「今の食事が一番だが」

『マリちゃんが作るのって基本味薄いよね』

「わかってるか知らないが、調味料とは高いものなんだよ。生産量少ないし、輸送コストもかさむし…王侯貴族御用達。今はお塩は従姉からタダで貰えるようになったし、スパイスも格安仕入れできるから使えるけど」

『…使わないよね』

「好みの問題です」

キッパリ。私が作るんだし、私の好みでなぜ悪い。

「それにこの生活を維持できなくなった時に困るだろう?何があるかはわからん」

『リース商会は簡単に潰れないわよ』

母参戦。潰さないの間違いでは?癒し系なんだけどなんだかちょっと……母だからなぁ。

「最近、国からいろいろ圧力がかかってるみたいだし、お仕置き依頼しといたよ」

『旅行の件ね。今回はルネの話があったから良かったけど、そうじゃなかったら母さんは断固反対よ』

『ええっ!僕とマリちゃんが一緒に出かけるの認めて下さい!』

勇者お前何を言ってるんだ。母が戸惑ってるじゃないか。

『勇者様はお姉ちゃんのことが気に入ってるのよね?』

『こっち来てからマリちゃんほど魅力的な女性に会ったことないよ!』

主に日本食に関する話題ができることだろ!

『姉貴のためにぜひまたクラーケンを捕ってきて下さい!』

『食堂で出す新しい料理も考えてね』

『今度はカスレに私も連れてって。ルネ兄に会うの』

『親戚共々よろしく』


ウチの家族の打算的思考舐めてた。すっかり話題が切り替わってる。勇者を利用する気満々じゃん。

わかってる?コイツに関わると国家に関わるって。ったく、欲望に忠実なのも考え物。

権力に関わるのキライなんだけどな。面倒くさいし。

とりあえず、明日はグリーンアスパラか?

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