表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/235

104

先日、勇者にサメの調理としてはんぺんを例に出してみたが、よく考えたら、サメでなくてもいいし、蒲鉾でもさつま揚げでもいいことに気づいた。

要はたんぱく質を変性させて固めればいいだけで、その味付けや調理法で名前が違うだけじゃん。肉で作ればハムだし……あ、魚肉ソーセージってのもあったな。


とにかく、たんぱく質を塩析したら凝固するわけで、そっちは試さなかったけど、日持ちしないんじゃお土産にはなんない。

従姉兄たちは新商品開発のつもりで私を引っ張り出したみたいだけど、私としては家族が喜んでくれたらいいだけ。主に弟とか妹とか妹とか妹とか…。

いや、弟も妹も一人ずつしかいないけど。

ハム好きな弟は蒲鉾が嫌いではないかもしれないが、どちらかと言うと噛みごたえがあるほうが好きそうだ。

噛みごたえ……えーっとホタテだっけ?の干したのしか思いつかない。うーん。アワビだ!アワビを醤油につけて運んでたら海無し県の名物になったって話があったな。………醤油?却下!


前世の記憶は前世で記憶したことしかない。当たり前だが。

興味なかったことは一切記憶してないし、間違ってインプットされてしまったのもある。そして私が持っている記憶は明らかに片寄っている。

もし来世に現世の記憶を持っていけたら、きっと妹と弟のことに違いない。

でも、前世の記憶などというミスが続くことはないだろうな。ってか、今も忘れても全く困らない。剣と魔法の世界には特に要らない知識だ。この世界の文明を底上げする気なんてこれっぽっちもない。

この場合の『コレ』って具体的に言うとドレなんだろうとか考えていたら、勇者が来た。


『………マリちゃん。山芋見つからなかった…』

精気も感じられないほど肩を落としていた。

「異世界だからな」

『せっかくサメ取ったのにぃ』

「お前の食欲のためにサメがいるわけでない」

『……一度捕ってみたかったんだもん』

だもんって20歳過ぎの男性が言っても可愛くないし。

『向こうじゃサメと格闘なんてできないし』

確かに普通の人はやんないな。

「命懸けてまでやることじゃないからな」

『命まではかけてないよ。サメだし。それに3回までは生き返られるし』


へっ?今なんか変なことを聞いたような…。


『召喚時に言われたんだけど、魔王討伐の時になんかあったら困るから復活できるんだよ』


はぁ?


「勇者って異常に丈夫との噂聞いてたけど?」

『丈夫だよ。でも、今までの勇者で討伐でやられた人がいるらしくって、復活の呪文が…』


それ、なんてチート。

しかも3回ってどこまで安全率見込んでんの?

頭悪くね?あ、他の世界からムリヤリ召喚して魔王討伐やらせようってんだから、よく考えなくてもおかしいわ。

ま、この世界に生まれちゃったんだから、そこは諦めるとしよう。



問題は…目の前で空気中にアンモニアを放出し始めているサメだ。ここリース商会の小会議室なんだけど………従姉兄たちの顔を思い浮かべ……



「……塩持って来い。揚げ油も用意しろ」

『了解!』

元気よく飛び出していく勇者の後ろ姿を見ながら、初めて運命を呪ってみた。

塩すり混ぜて揚げたらさつま揚げになるかなぁ…。ああ、わかんねー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ