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海風が暖かさを運んできた。
ふと、思い出した。今年はまだアーティチョークを食べてない!
王都を出る時にはまだ早くて、カスレ辺りでは育ててない。そして戻る頃には…季節が終わりそうだ。向こうの世界と違ってこっちは季節に忠実だ。ちょっとでも時期をハズれると食べられなくなる。
5人家族で3個買って…いや、本当は一人一個にしたいんだけど、お値段の関係で…庶民なんだよ、文句あるか?
おまけに、食べられる部分が少ないこれを買うくらいなら豆のスープを大量に作ってくれって弟が言うんだ。ブランシュは微かなえぐみが苦手らしく、ちょっとしか食べない。
季節感は大切だが、費用対効果を考えると4個は買えない。
茹でたアーティチョークを皿に乗せ、萼を一枚一枚引き抜いて、付け根の部分を歯でしごいて食べる。
萼を一枚妹に向ければ、パクッと口にして『お姉ちゃんがくれるのは美味しい』って笑顔で………たとえ騙されててもいい。よく考えなくても私が喜ぶから妹はムリして食べてる気がする。
萼が無くなった後に土台の毛の部分…もしかして雌しべか雄しべ?…を取り除いて、ハートの部分を……
ため息をついた。
王都に帰って家族団欒を堪能したい。
カスレの赤牛?家族に含めない。あいつのおかげでどんだけ苦労したことか!
なんか腹が立ってきたな。従姉兄を誘って、牛に奢らして豪遊したる!
ほとんど従姉兄たちの酒代になる気もする。あそこん家は全員うわばみだ。ザルって感じじゃなく、枠!肝臓の処理速度が間違ってるんじゃないかって常々思ってる。酵素を活性化する何かがあるのかもしれない。
会場は従兄に手配してもらって、一声かければ牛は絶対に、何があっても、どんなに遅れても来る。ぶっちゃけ支払いの時だけの居る方が嬉しい。
忘れてることがある気がするけど、きっと二度と思い出さなくてもいいことだ。




