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「先生、おはようございます」

 目を覚ました俺の隣に、学園一の美女といわれる校医がいる。

 俺は数秒、事態を把握できずに固まった。まさか酒に酔った勢いで連れ込んだか? いやそもそもコイツと酒を飲むことなんかないだろう。じゃあ、なんでだ? ああ、少しずつ思い出してきた。少しずつ、少しずつ……ああそうだ思い出した。確か俺は昨日、大空の野郎に無理やり拉致されてアイツが私物化してる理科準備室に監禁されて―――怪しげな薬を飲まされ、そして、

「先生、寝顔すごいかわいかったですよ」

「ざけんな! オッサンの寝顔のどこが可愛いっ」

「今は子供じゃないですか」

 そう、子供になってしまったのだ。

 俺の眼の前で横になっているのは、天川学園の高等科校医・昴織姫。

 美人で胸もでかくて尻も丸くていい形をしていて、太腿なんかエロ親父ホイホイかと言いたくなるくらいむちっとしていて魅力的だ。そう、この昴織姫は胸がでかくてむちむちでぷりっぷりで美人な上にエロいのだ。ちなみに本人はそれを自覚していないらしい。

 何故って、自覚していたら、シャツ一枚で寝ていないだろう。そう、織姫は今、俺の横でむちむちぷりぷりの体をシャツ一枚で包んだだけの姿で寝ているのだ。まあそれもコイツの目の前にいるのが四十三歳のオッサンなら躊躇われただろうが、今、目の前にいるのは五歳の子供だ。

 そう、俺は子供なのだ。

「それより先生、ほら。早くしないと学校始まっちゃいますよ」

 織姫が優しく微笑みながら、起き上がり、少し照れくさそうに髪を掻きあげる。

 学校が始まる。つまりその準備をしなきゃならない。だが俺の場合、顔を洗って歯を磨いて食事、の前にやらなきゃならないことがある。そう、この体を大人に戻さなきゃならないのだ。

 恥ずかしい。

 かなり恥ずかしい。いや世間一般の目から見ればこれは羨ましい以外の何ものでもないのかもしれないが……だが、いざ、こんなむちむち女の無防備な姿を目の前にさらされたら喜ぶよりも前に恥ずかしさと戸惑いばかりが襲ってくる。

「い、いや! やっぱいい! っつーか学校なんざ行かなくたって別にいいだろ」

「なに言ってるんですか、だめですよ! お仕事なんですからっ」

「面倒くせぇな。もういいや、お前が養え」

 再びベッドに転がり、出勤拒否を五歳児の体全体で表してみる。

「別に構いませんけど、お小遣いは一か月百円ですよ? それじゃ煙草も買えないしお酒も買えませんよね」

「ひゃ、百円……」

「ほら、わかったら起きてください」

 起きるのなんざ真っ平ごめんだったが、哀しいかな今の俺は五歳児の体だ。軽々と持ち上げられ、座らされてしまった。

「大丈夫ですよ、先生。ほら」

「し、知らねぇぞ」

 恥ずかしい。

 よく中身おっさんのガキとそんなことしようと思えるよな。

 俺は胸中で独り言ち、緊張のあまりごくりと生唾を飲み込んだ。

 そして小さい体をずいと織姫に寄せ、そっと肩に手を置いて体を伸ばした。そして、朝っぱらから俺はむちむち女とキスをした。唇まで柔らかい。というか全身、余すと来なく柔らかいんじゃないのか。思わずそんなことを考えてしまった。

 そしてゆっくりと唇を離す―――両手を確認すると、ちゃんと大人に戻っていた。どんだけ効果があるのかわからないが、とにかく助かった。だが俺はそこである問題に気が付いた。そう、自分が一糸まとわぬ姿であることに。全裸男とシャツ一枚のむちむち女、この図はさすがにやばいだろう……

 織姫も頬を真っ赤にし、大人に戻った俺の姿に動揺している。いや、こうなることはわかってただろお前……

「せ、先生! あのあの、何かはいてくださいいぃいいいいい!」

「わぁってるよ、ったく」

 ガキの時とえらい態度の違いだな。

 とりあえず昨日コンビニで買い揃えた大人用の下着と、何日も洗っていない着古した服に着替えた。その服を見て、落ち着きを取り戻した織姫が「先生、そればっちぃですよ!  放課後もっと清潔なお洋服買いに行きましょう!」と行ってきたが適当にあしらっておいた。そんな面倒なことはしたくない。俺は極力なにもせず生きていきたいのだ。なんて言ってる俺だが教職についてもう二十年になる。なんだかんだと言いながらよく続いてるな、と自分でも感心する。

 そういえばコイツ、織姫はなんだって俺なんかを居候させる気になったんだ。いくら見た目が子供だろうが中身はオッサンだ。しかも居候だけならまだしも俺とキスまでして、昨日なんか一緒に風呂にまで入った。いくら子供が好きだとしても、結局、俺は中身は四十三歳の小汚いオッサンなのだ。まあ、嫌じゃないなら別にそれでいいんだけど……




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