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 久々に酒を飲んで酔っ払った俺は家に帰るなり風呂にも入らずベッドに転がった。織姫もパジャマ代わりにしている白いシャツに着替えると、当然のように俺の横に寝そべり「おやすみなさい」なんて微笑んでくれる。けど俺は、素直に眠りたくなかった。

「先生、どうかしましたか?」

「ぎゅうって、してくれ」

 俺は織姫の腰に腕を回し、相手の返事も待たずに胸に顔をうずめた。

 織姫は驚いたように小さく声を上げたが、

「……先生、お疲れ様です」

 優しく頭を撫でながら、可愛らしい声で労をねぎらってくれる織姫。

 普通の子供ってのは、こういうことを母親にされるもんなんだろうなあ。俺は一度だってされたことはなかったけど。なんかすごい気持ちがいいし、嬉しいし、癒される。胸が柔らかいのもそうだが、心が気持ちいっていうか、幸福感に包まれているっていうのか……もうこのまま大人であることを忘れてデレッデレにどろっどろに甘えたくなる。

「いいこ、いいこ……です」

「ん……ぅ……」

 胸に顔をうずめて揉みながら頭を撫でられる。

 まるで赤ん坊みたいだが、心地よくて離れたくない。

 いやらしさより母性にどっぷり甘えたい気持ちが大きい。

 安心しきってるのか、ゆっくりと眠気が訪れた。

「おり……ひめ……」

「はい。ずっと、ずっと、このままでいいですよ」

 優しい声が、耳をくすぐる。

 眠い。眠い……心地いい。ずっとずっとこのまま、織姫に包まれていたい。





 で、朝になっていた。

「せんせー、朝ですよ? 早く起きないと、お休みだからっていつまでも寝てちゃだめですよ」

 織姫の元気な声が聞こえる。

 昨日居酒屋に行って久々に酒を飲んだ俺は気分がよくなったからか愚痴や弱音を吐きまくり、それから……それから確かタクシーに乗って帰って来て、織姫の胸にぎゅうってされながら眠りについた。

 酔っ払ってたとはいえ、我ながら、恥ずかしいことをしたもんだ……。

 もう目が覚めているのに、起きて顔を合わせるのが辛い。気まずい。恥ずかしい。どうやって起きたらいいんだよ、どんな顔して起きたらいいんだよ? とりあえずもう少し寝たふりしとこう。

「二日酔いですかぁ?」

 声が近づく。

 そっと薄目を開けてみると―――キャミソールにエプロン姿の織姫が豊満な胸を露わに前かがみになって俺を覗き込んでいる。俺は昨日、その胸に顔をうずめて眠ったのだ。我ながらよくそんなことしたなと、恥ずかしくなる。

「ほら先生、起きてください」

 織姫が俺の体を揺さぶると、大きな胸もぷるぷると揺れる。正直、下からの見るその光景は、なんともいえずいやらしい。

「お、起きないなら……こうですよ?」

 ちょっと恥ずかしそうに言って、なにするつもりかと思ったらベッドに潜り込んできて、

「窒息、してもしりませんよ?」

 織姫の弾力のある大きな胸が俺の顔に圧し掛かる。

 柔らかくてハリがあって鷲掴みにしても有り余るくらいに大きな胸が。

「んぅっ……! んんんんん!」

「あ、起きました」

 ベッドに両手をついてひょいと体を話す織姫。目の前で豊かな胸がぷるんと揺れた。

「お、お前なあああああ!」

「だって全然起きる気配がなかったので……」

 照れくさそうに人差し指で頬をかく織姫。そのままストンと俺の膝の上に座ったが、尻の肉が俺の大事な場所に当たってるわ裸エプロンにしか見えない状態の服装で胸の谷間もはっきり見えてるわで、朝からとんでもないことになっている。ていうか股間が、股間がヤバい。

「大丈夫ですか?」

「ちょ、とりあえず、そこどけっ」

「あ! お、重かったですかすいません!」

「いや、そういうわけじゃねえけど……」

 ようやく起き上がり、織姫もやっと膝から降りた。

「頭は痛くないですか?」

「あ、ああ。大丈夫だ」

「あ。そういえば今日は子供の姿じゃありませんね、珍しく」

「……そういや昨日も殆ど子供の姿に戻らなかったな」

「もしかして……銀河先生のお薬の効果が薄れてきたとか? それでこの間あんなお薬を送って来たとか」

「マジか! じゃあ俺はもう二度と子供に戻らずにすむのかっ」

「そ、それはどうかわかりませんけど」

「まあ、お前もその方が楽でいいだろうしな。あと一週間、子供に戻らなかったら帰るわ」

「い、一週間ですか?」

「ああ。これ以上お前に迷惑かけるのも悪いしな」

「わ、私は別に」

「俺がいたら彼氏だって作りにくいだろ?」

 俺は冗談ぽく言ってみた。

 織姫は優しい。俺をぎゅっと胸に抱いてくれるのも、優しさからだ。それ以上の気持ちがないことくらい、俺だってわかっている。あまりに男として嬉しいことが続いたから忘れかけていたが、俺とコイツは別に特別な関係なんかじゃないんだ。だから、離れたって、おかしくはない。もちろん、離れるのは寂しいんだが。

 なんて俺が考えていたら、

「かっ……彼氏なんていませんし、いりませえええええええんっ!」

 絶叫した。

 絶叫して俺の顔をぎゅうううううううう! と抱きしめる。

「いりません! いらないんです! だから! だめなんです!」

「ちょ、おい、くるしっ……」

「私は先生と一緒にいたいんです。だから……」

「わ、わかった、わかったからっ」

「疲れたら、こうやってぎゅうってして頭なでてあげますから」

 織姫は俺を胸に抱いたまま、寂しそうに言って頭を撫でる。

 そんなに寂しいのか。いや俺だって同じ気持ちだけど。ほんの数日とはいえ寝食を共にし、仕方ないこととはいえキスまでした仲だ。離れるのは、確かに寂しい。

「あ、ああ」

 まあ、確かに―――この感触を手放すのは惜しい。

 太腿だってむちむちしている。触れてみるとすべすべしていて、弾力があって、そのままエプロンの下に手を滑り込ませたくなるが、そこは必死に堪えておいた―――って、なに当然のように触ってるんだ。我に返って物凄く恥ずかしくなり、慌てて織姫から離れた。

「あ、朝飯食うか」

「は、はいっ!」

 無邪気に嬉しそうに笑っている。

 そんな嬉しそうにされると、すごい照れくさくなるな。



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