2話 夢と現実
目が覚めたらそこは見知らぬ部屋だった……
点滴されているところを見ると病室か。そういえばヘリコプターに乗せられたんだよな。
とりあえず現状が何も分からないからナースコールでもするか。
ボタンを押すとすぐにナースとドクターがやって来た。
「目が覚めたようだね。体調はどうだい?」
「今のところは特に無いので大丈夫です」
「そうか、それなら良かった。何か違和感とか感じたらすぐに言ってね」
ドクターは優しい口調で話してくれるので心が少し落ち着いた。
気になる事はいくつかあるがまず一番大事な事を聞かなければ。
「あの、俺と一緒に男子一人と女子二人が運ばれたと思うんですが……」
記憶では皆特に怪我をしてなかったと思うが、それが心配でならなかった。
「三人とも異常は無いよ。木場君はまだ眠っているが、島田さんと安達さんはもう目が覚めているよ」
皆が無事で良かった。
失礼します、と今まで黙っていたナースが点滴の針を抜いて道具を片付けていく。
「それじゃあ木場君も目が覚めたら自衛隊の人が話を聞きに来るからそれまで退屈だろうけどゆっくりしていてね」
そう言うと二人は部屋から出ていった。
その三十分後に拓海が起き、さらに一時間後事情聴取が行われた。
内容は勿論、<ゲート>についてだ。
成り行きを自衛隊の人に話していき、今の状態を聞いた。
成り行きを自衛隊の人に話していき、今の状態を聞いた。
どうやら<ゲート>は世界中で発生していたそうだ。
<異界との接触>では二百三十個発生したのが、今回新たに見つかったと発表されたのは今のところ二百二十個もあるそうだ。
しかしそれぞれ発生までに時間差があるらしくまだまだ増える可能性があるらしい。
「ありがとう、これで一応終わりだ。あ、最後に変なことを聞くけどさっきまで四人は寝ていたんだよね?何か夢を見たりしたかな?」
本当に変なこと聞くものだな。
「覚えてる限りでは見てないですね」
私も見てないです、と女子二人が言う。
「そうか。木場君、君はどうかな?」
「お、俺は……」
拓海は何故か言葉に詰まっている。
無いなら無いと言ってしまえば良いのに、と思いつつ拓海の方を見る。
「俺は、見ました――」
「……そうか。木場君にはもう少し話を聞くが君達は部屋に戻ってくれ」
え?
夢に何かあるとでも言う様な発言だ。
俺達三人は少し戸惑いつつも別の自衛隊員に促されて部屋を出る。
「もしかしたらまた聞くことになるかもしれません。その時はまたよろしくお願いします」
「後、数日の間にハッキリとした夢を見たら連絡して下さい」
それから俺達三人は家族に迎えに来てもらって退院をした。
帰り際、
「柳君、その……き、今日は私達を守ってくれてありがとう!」
島田が照れながらお礼を言ってきた。
「ありがとう」の部分で声が若干裏返ってたりと少しキュンとしてしまったのは内緒だ。
「守るだなんてそんな……」
「ううん、しっかり守ってもらったから私達は無傷で助かったんだからね。私からも、ありがとっ」
安達もなかなか嬉しい事言ってくれる。
まあ当たり前の事しただけだから自慢したりする事でも無いんだけどね。
「いつもはあんま冴えない感じの柳なのについ今日はカッコイイと思えちゃったしね!」
「いつも冴えないってのは余計だ!」
あははっ、と三人で笑っていた。
「木場君、大丈夫かな」
「大丈夫だろ、夢についてだったらしいし」
「だよね~ 後で木場っちにもお礼のメールしとこっと」
なんて話もした。
普段モテない俺としてはフラグがたったか!?、とすぐに思ってしまうのが少し情けないとも思うが、今日は気持ち良く寝れそうだ。
拓海については正直あんな事を言いつつ少し心配だが、大丈夫だと信じよう。
今日は疲れたな……
――――
ぐっすり眠っていたが朝の日差しによって目が覚めた。
「朝か……」
俺は夢見ていた。
内容は最近始めた近未来的な俗に言うFPSというジャンルのゲームだ。
弾の種類が豊富でその場にある物を調合出来たり、FPSにしては戦闘機に乗って空中戦を繰り広げたりも出来るかなり自由度の高いゲームだ。
近未来的かつ、あまりの自由さに本格的なFPSを好むユーザーからは批判もあったりするが普通に人気な部類に入るだろう。
俺自身は今まであまり戦争物をしたことが無く武器の種類に詳しかったりはしないため現実離れしていようと設定に対する不満は無く純粋に楽しんでる。
――ハッキリとした夢を見たら連絡して下さい――
昨日の自衛隊員の言葉を思い出したが、まさかゲームの夢位で呼び出すことも無いだろう。
今日はまだ平日。
両親は無理しないで明日からでも、と言うがやはり大学に進学するつもりだという事も踏まえるとあまり休むわけにもいかないだろう。
少しゆっくりし過ぎた為、今からでは急いでもニ限からの出席になるが行かないよりはましだ。
朝食を食べて徒歩で学校へ向かう。
母が車で送ると言ったが気分的には歩きたかった。
よく晴れた日に朝から歩くのは気分が良い。
ちょっと三限に間に合うかも不安になってきたがまあ良いか。確か体育のはずだったし。
のんびり歩いていると電線に乗っているカラスが目に入った。
カラスってあまり好きじゃないんだよなあ。
俺は何となく右手で銃の形を作り、
「バーン――」
なんつっ、て……?
右手の人差し指をが指す方向にいたカラスの胸に穴が空いて地面にドサッと落ちる。
えっ……?
何が起きたんだ……?
だたの指鉄砲でカラスが死んだ……?
輪ゴムとか使ってた訳でもなく……?
いやまさか、な――
ピピッ――
頭の中で電子音の様な音が鳴る。
良く見るとさっき死んだカラスの横に居たもう一羽のカラスに何かが付いてる。
いや、正確には俺の目がカラスを的にするようにマーカーが付いてる。
まるでゲームの中で戦闘機が付けるターゲットマーカーみたいに――
ピピッ――
ピピッ――
ピピッ――
ピ、ピピピピピピピピピピッ!!!――
カラスだけじゃない。民家の屋根で寝ている猫にも通行人にも車にも飛行機にも、目に入った何もかもにマーカーが付く。
痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
頭の中で鳴り続ける電子音が俺を壊していく気がした――
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