妄想妹
『血の繋がらない妹の初恋相手は兄の俺だった』
こんなロマンティックな妄想を、もう中学一年生の頃からかれこれ五年間ずっと考えてい
る。
勿論その時期によって妹の名前、年齢、顔立ち、性格も変化している訳だが、彼女たちに
かける愛情は一度も変わった事は無い。それだけは胸を張って言える。
そして目出度い事に、二十人目の妄想妹が先日誕生したばかりなのだ。
彼女、『加奈』はおっとり屋さんだが、優しくて中学一年生の癖にグラマラスで、それに
何といっても『俺思い』な出来た妹だ。
今朝も登校する前に食パンをかじりながら
「待ってよぅ〜おにいちゃ〜ん」
と涙目で懇願する仕草にトキメキを感じさせてくれた。
だからといって我々に肉体的な関係は無い。
いや、仮に現実世界の話としても、それは俺が許さないだろう。一線を越えない葛藤とジ
レンマ、そこが義兄妹愛の醍醐味なのだから。
そしてもし妹が、加奈が好意を打ち明ける日が来たとき、俺はそっと言うのだ。
「俺はお前が好きだ、でもこのスキはラブではなくライクなんだ」と。
きっと加奈は傷つき、真珠のような涙を零すだろう。そこで俺は彼女を抱きすくめて優し
く囁くんだ。
「判ったよ。じゃあ今日だけは俺とお前は恋人同士だ。いいかい、今日だけだぞ?」
加奈は目に嬉し涙を溜め、潤んだ瞳で俺を熱く見つめるだろう。
勿論肉体関係は無くともキスまでは…いや、本番以外は成り行きによって許可しよう。
彼女だって、俺にお布団の中で甘えたいに決まっているのだから。
「おにいちゃん」
「なんだよ」
「何でもない、えへへ」
俺が変な奴だなとおでこをチョンとつつくと、加奈はオーバーに痛がってふえ〜んと泣く
だろう。
やれやれと言いながらも、おでこにおまじないのキスを忘れない気配りも心得ているつも
りだ。
誰からだったか、いつか聞いた『人間、願いはいつか叶う』という言葉。
さあ、この願いが神に聞き入れられるその日まで、今日もまた妄想力を掻き立てよう。
もう計画の第一段階『片親になる』というのは実行済みなのだから。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
不快になられたらすいません……。