結界
授業が終わった。誠は自分の作ったジャック・オランタンを抱えて、自分の勉強道具や荷物を持って駆け出した。遠くで響の声が聞こえる。多分、急に帰りの挨拶もせず教室を飛び出した誠を呼び止める声。「誠~」
誠は申し訳ないと思いながらも一目散に家に向かって走った。脇目も振らず急いで自分の家の部屋に駆け込んだ。そして誠は自分の机にそーろっと例の物を置いた。
「そんなに焦らなくて大丈夫だよ」
ああ、やはりこれは夢じゃなかったんだ。目の前でしゃべる自分の作ったジャック・オ・ランタンを見て思った。
「う、うん」
「マコト、さっきはありがとう。ボクを助けてくれたんだね」
「さっき?」
「火を灯すのを拒否してくれた」
「ああ…だって君しゃべるんだもん」
「あはは、優しいね。でもボク、火は大丈夫なんだよ」
「どういうこと?一体、君は何なの?」
「ボクは、火の使い。10月31日にだけ生まれることができる。それもあの場所あの時間に、ある条件を持った者が作るジャック・オ・ランタンだけが生を受けることができるんだ」
「よくわからないけど、とてもびっくりしたよ」
「ボクは君によって選ばれたんだ。君はよくわかってないかもしれないけど、君の教室、あそこは結界なんだ」
「四年三組の?」
「うん。ボクがいた魔界とこの世界との結界。そして、君はよくわかってないかもしれないけど、君は魔法使いなんだ」