ハロウィンの出来事
「ふー、できたー」
誠は持っていたナイフを机の上に置いた。
誠は小学四年生。とある街のとある小学生である。今日は、ハロウィンのため、四年三組の生徒たち五限目の図工で、ジャック・オ・ランタンと呼ばれるカボチャをくりぬいて作るおばけのランプを作っていた。
「誠、はえーな」
勢いよく声をかけてきたのは隣に座るクラスメイトの響。
「うん。なんか‥よくわかんないんだけど‥神が乗り移ったみたいに」
誠一は得意気に答える。
「は~?神様なんて信じてるの?」
響は笑う
「ううん、信じてなんかないけどさ、なんかそれくらいできたってこと」
「ふぅん、どれどれ」響は誠のカボチャのおばけを覗き込んだ。
「げー、何だこれ変なの」
それはとてもおばけと呼ぶには似つかわしくない顔立ちをしていた。
「変って失礼だな」
誠はむっとした。
「さ~、みんなできたかしら」
クラスの担任の藤子先生がみんなに言った。
「あ~俺まだ出来てないよ」
「ほら響は、油売ってるから」
誠一はからかった。
「‥くん、ま‥ことくん?」
「何?、響、油売ってんじゃないよ集中しろよ」
「ん?何も言ってないけど?」
「え、‥呼ばれたような気がしたから」
「呼んでないよ?誠さっきから神がどうとか言ってたし、頭大丈夫かよ~わっははは」
「っなんだよ~」
「‥くん、まことくん」
やっぱり声がする。誠は視線を下にやった。
嘘だろ・・・
誠の作ったカボチャのおばけはナイフでくり抜いた目とは思えない輝きを帯びた眼がこっちを見ている。
「きみ、まことって言うの?」
少し甲高い小さな声は確かにカボチャのおばけから発せられている。
「しゃ、しゃ、しゃべった」
「なにが?」
響が言った。
「え、あ、う、ううん。な何でもない」ともかく、今ここでこのことを知られてはいけない。そう考えた誠は早くこの授業が終わってくれることだけを考えていた。どうしようかと・・。
「こんな状況誰が見たっておかしいね」
カボチャのおばけは言った。
「シーッ、今ここでばれたらとんでもないことになる」
「そうだね。じゃ黙っておくよ」
「頼んだよ」
「出来たー」作業に集中していた響が作り終えた。残りの生徒も作り終わったようだった。
「みんな出来たみたいね。それじゃあみんなのカボチャのおばけに火を灯しまーす」
クラスの担任の花子先生ははりっきって言った。
「火ー?」
「どうしたの悠木誠君。驚いて」
「あの、僕、恐怖症があって、火がダメなんです」
「変ねえ。そんなこと聞いたことなかったわ。夏のキャンプファイヤーでも楽しそうにしてたじゃない」
「あ、あ、あの時は大丈夫だったんです。さ最近急に怖くなって…。ぼ僕、お墓で火の玉を見ちゃったんです…。それ以来火がダメで…」
「火の玉~?やっぱり誠どうかしちまったぞー」
響はからかい、クラスメイトが怪しい人を見るように誠をジロジロ見たり、くすくす笑う者もいた。
キーンコーンカーン
授業終了の鐘がなった。
「あ~もう時間が来ちゃった。いいわ。じゃ、この出来たジャックオランタンはお家に持って帰って各自火を灯してください」藤子先生が告げる。
誠は安堵した。この喋るカボチャのことを今知られたら大変だ。火を灯すなんてとんでもない、誠が作り出したカボチャのおばけは生命があるようなのだ。