第7話:王都の貴族女性たちが『美の秘訣』を求めて殺到しましたが、殿下が『彼女の指は国宝だ、触れるなら城をよこせ』と法外な値段をつけるので、私のサロンが敷居高すぎ問題
王都への凱旋パレードから数日後。
私が王宮の一角(殿下が強引に用意した離宮)で優雅にハーブティーを飲んでいると、窓の外から地鳴りのような音が聞こえてきた。
「エリザ様!! どうかお会いください!!」
「その美しさの秘密を! 金ならいくらでも出しますわ!!」
「私の肌を診てください! このままでは社交界に出られません!!」
窓の下には、数百人の貴族令嬢、夫人たちが詰めかけていた。
中には、かつて私を「デブでブス」と嘲笑っていた者たちもいる。
彼女たちの目は血走り、必死の形相だ。
私の「劇的ビフォーアフター」を見た彼女たちは、なりふり構わず**「美の暴力」**に屈したのだ。
(ふふ……予想通りね。この世界の女性も、悩みは同じ)
私はニヤリと笑い、バルコニーに出た。
「皆様、お静かに願いますわ」
私が手を挙げると、それだけで群衆が静まり返る。
今の私は、ただの公爵令嬢ではない。王太子殿下が「細胞レベル」で認めた**「美のカリスマ」**だ。
「私の施術を受けたい、と仰るのですね?」
「は、はい! お願いします!」
「どんな魔法を使ったのですか!? 聖女様の奇跡ですか!?」
私は人差し指をチッチッ、と振った。
「魔法ではありません。**『努力』と『科学』と『腸活』**です」
「ちょ、ちょう……?」
「いいでしょう。私のサロン**『ロイヤル・グロウ(Royal Glow)』**を本日より仮オープンします。ただし!」
私は扇子をバシッ!と閉じた。
「私の施術は甘くないわよ?
深夜の夜会での暴食は禁止。砂糖たっぷりの紅茶も禁止。コルセットでの締め付けも禁止。
私の指導に従えない方は、毛穴一つ開かせませんわ」
会場がざわめく。
「そ、そんな……お菓子をやめるなんて……」
「でも、あんな肌になれるなら……!」
その時、背後から「待った」がかかった。
爽やかすぎて直視できないオーラを放つ、クラウス殿下だ。
「おいエリザ。勝手に安売りするなと言っただろう」
「あら殿下。ビジネスチャンスですわよ?」
殿下は群衆を見下ろし、冷徹な(しかし爽やかな)声で言い放った。
「いいか、愚民ども!!
彼女の『ゴッドハンド』は、俺のリンパを流し、国を救った**『神の指』**だ。
おいそれと触れさせていいものではない!!」
殿下は真顔で条件を提示し始めた。
「施術を受けたいなら、以下の条件を飲むんだな。
1.施術料は『城一つ』に相当する対価とする。
2.施術中は、彼女に息がかからないよう『無呼吸』を維持すること。
3.彼女の手が疲れたら、即座に中止し、貴様らが彼女の肩を揉むこと!」
「無茶苦茶ですわ殿下ーー!?」
「死んでしまいますーー!!」
令嬢たちが悲鳴を上げる。
私も慌てて殿下の脇腹を肘でつつく。
「ちょっと! お客さんを脅さないでください! 商売上がったりです!」
「何を言う。君の指の価値は、国家予算を超えているんだぞ?
俺としては、君の手が他の誰かの肌に触れること自体、**細胞が拒否反応**を起こして暴動寸前なんだが?」
殿下は私の手を両手で包み込み、頬ずりし始めた。
こっそり「独占欲」を漏れ出させる殿下に、集まった令嬢たちが「ひぇっ……尊い……」と別の意味で卒倒し始める。
(……まあ、いいわ)
私は咳払いをして、改めて宣言した。
「殿下の冗談(本気)はさておき。
私のサロンは**『完全紹介制』かつ『選抜試験あり』**とさせていただきます。
本気で『美』と向き合う覚悟のある方のみ、門を叩きなさい!」
「「「はいぃぃぃぃ!! 教祖様ぁぁぁ!!」」」
こうして、王都に史上初の美容サロンが開業した。
そこは、入会倍率100倍。
王妃様ですら予約待ちという、伝説の**「美の虎の穴」**となったのである。




