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第6話:王都凱旋パレード。元婚約者が「誰だあの美女は!?」と叫んでいますが、残念、それはあなたが捨てた(元)汚肌令嬢です〜横の聖女様、ファンデ浮いてますよ?〜

王都のメインストリートは、異様な熱気に包まれていた。

「辺境で王太子の呪いを解いた聖女が現れた」という噂が広まり、国民たちが沿道を埋め尽くしているのだ。

王宮のバルコニーでは、第一王子カイル(元婚約者)と、その恋人マリアが余裕の笑みを浮かべていた。

「ふん、聖女だと? 笑わせるな。どうせあのエリザが、薄汚い姿で捕まって戻ってきただけだろう」

「そうですわね、カイル様。きっと泣いて許しを乞うに決まってますわ。あの方、肌も汚いですし……」

マリアは厚塗りの白粉おしろいを扇子で隠しながら、クスクスと笑った。

その時だ。

ファンファーレと共に、豪華絢爛な王室の馬車が広場に滑り込んできた。

扉が開く。

「さあ、降りよう。私の女王クイーン

先に降りたクラウス殿下が、恭しく手を差し伸べる。

その手を取って現れた女性に、広場中の時が止まった。

「……え?」

カイル王子の口から、間の抜けた声が漏れる。

そこにいたのは、透き通るような白磁の肌を持つ絶世の美女。

陽光を反射して輝くデコルテ。

引き締まったウエスト。

何より、その全身から溢れ出る**「圧倒的な健康オーラ」**が、見る者すべてを魅了していた。

かつての、吹き出物だらけで太っていたエリザの面影は、どこにもない。

「誰だ……あの天女は……?」

「美しい……あんな綺麗な人が、この国にいたのか……?」

民衆のざわめきが波紋のように広がる。

エリザは優雅に微笑み、観衆に向かって手を振った。その仕草一つで、黄色い歓声が上がる。

カイル王子とマリアは、バルコニーを駆け下り、馬車の前へと割り込んだ。

「おいクラウス兄上! 誰だその美女は! 紹介しろ!」

「そ、そうですわ! どこの国の姫君ですの!?」

二人は、目の前の美女がエリザだとは微塵も思っていない。

私は内心でガッツポーズをしつつ、ゆっくりと口を開いた。

「お久しぶりですわ、カイル殿下。それにマリア様。……私の顔、お忘れですか?」

その声を聞いた瞬間、カイル王子の顔が引きつった。

「そ、その声……まさか……エリザ、なのか……!?」

「ええ。辺境での『腸活』と『デトックス』のおかげで、少しすっきりしましたの」

「ば、馬鹿な! たった数週間で、人間がこれほど変わるわけが……!」

カイル王子は食い入るように私を見つめた。

その目には、驚愕と――隠しきれない**「欲情」と「後悔」**の色が浮かんでいる。

かつて私をゴミを見るような目で見ていた男が、今は涎を垂らさんばかりに見惚れている。

(……あー、気持ちいい。最高の気分だわ)

私は扇子を開き、口元を隠して「診断」を開始した。

「カイル殿下。随分と顔色が土気色ですね。肝機能の数値、下がっていましてよ? お酒の飲み過ぎとお見受けします」

「なっ……」

そして、私は隣で震えているマリアに向き直った。

彼女は、美しくなった私を見て、悔しさで唇を噛み締めている。

「あら、マリア様。……大変申し上げにくいのですが」

「な、なんですの!?」

「ファンデーション、酸化してドロドロに浮いてますわよ?」

「ひっ!?」

マリアが慌てて頬を押さえる。

「糖分の摂りすぎによる『糖化』で肌がくすんでいますし、その厚化粧は毛穴を窒息させています。……ああ、可哀想に。今の貴女の肌年齢、40代後半ですわね」

ズバァァァン!!(精神的ダメージ音)

「よ、40代……!?」

マリアはその場に崩れ落ちそうになった。

美容マウントにおいて、「肌年齢」という数字は最も残酷な凶器だ。

「エリザ……! 君は……やはり美しい……!」

カイル王子が、掌を返して私にすがりつこうと手を伸ばしてきた。

「婚約破棄の話だが、あれは間違いだった! 今すぐやり直そう! 俺には君が必要だ!」

ああ、予想通りのクズ発言。

私が冷ややかな視線で拒絶しようとした、その時。

「気安く触れるな、菌が移る」

低い声と共に、私の前に立ちはだかる大きな背中があった。

クラウス殿下だ。

「兄上……どいてくれ。俺とエリザは元婚約者で……」

「黙れカイル。今の彼女は、貴様のような『不摂生な男』が触れていい存在ではない」

クラウス殿下は、カイルを鋭く睨みつけ、言い放った。

「彼女の肌は、37兆個の細胞が選び抜いた奇跡だ。

ジャンクフードと夜更かしで汚れた貴様の指一本触れさせん!!

貴様が彼女に近づいていいのは、半径5メートルまでだ。それ以上は彼女の毛穴がストレスを感じて閉じてしまう!!」

「け、毛穴……!?」

「行こう、エリザ。

この場所の空気は悪い。君の美しい肺に入れるには値しない」

クラウス殿下は私の腰を抱き、エスコートする。

民衆からは「キャー! クラウス様素敵ー!」「ざまぁみろカイル王子!」という声援が飛んだ。

私は呆然とする元婚約者たちに、最後の一撃となる笑顔を向けた。

「ごきげんよう。……まずは洗顔からやり直してくることを、お勧めいたしますわ」

馬車に乗り込む私たち。

遠ざかる景色の中で、カイルとマリアが惨めに立ち尽くしているのが見えた。

胸がすくような完全勝利。

だが、これはまだ序章に過ぎない。

私はこの王都に、本物の「美」を流行らせるのだから。

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