僕と君との出会い
この物語はフィクションです。
実在する人物、事件とは一切関係はありません。
この物語には、虐待や非人道的な行為がございます
苦手な方はお気を付けください。
僕は 君と出会って世界が変わった気がするよ。
そんな君と僕の何気ない日常を紡ぐ物語。
初めはどうやって出会ったかな、ぼんやりとだけど 思い出してみるよ。
あの日、僕は…
綺麗な桜が散って 季節が変わるそんな時期。
委員会の手伝いをしていた、なんとなく ただ頼まれて。
帰る頃には夕方頃になっていた、夕日が照りつける中
早く帰ってしまいたくて廊下を歩いていた。
今日は帰ったら何をしようか、ゲームでも勉強でもなんでもいい
ただ、人と馴染めなくて 集団行動や生活なんて苦手だった。
そんな中で、自分なりに目立たないように 普通の男子高生でいたくて頑張ってそれとなく馴染んだふりをしていた。
下駄箱の前で、長い前髪で目元を隠して ノロマな僕は靴を取り出して 上履きと履き替えていた。
たったその動作一つでも遅い でも、それで良かった。
だって 君が笑いかけて話し掛けてくれたから。
ふんわりとした絹で出来たかのような そのシクラメン色の髪を揺らして、桜を煮詰めた様な綺麗なその瞳で見つめて 僕に笑いかけた。
「貴方も居残りですか?」
薄い唇で開いて、どちらとも分からない 中性的な声音でそう問いかけた。
ゆらゆらと揺れる 赤く細いリボンが、髪を結っていて
セーラー服を着ていた。
でも、その割には 肩が広いような気もした。
話し掛けられて、思わず動揺してしまった
僕は口を開いても吃ってしまう。
そんな僕を見ても、優しく 見つめてくれていた。
僕の言葉を待ってくれていた。
「いや、僕は…委員会の、手伝いで」
「委員会の手伝いですか?」
「凄い、偉い、頑張り屋ですね」
「あ、ありがとう…?」
手をパチパチとさせ、穏やかに微笑む。
垂れたその目が 細められて笑うと、なおのことその瞳が蕩けているかのような錯覚を生んでしまう。
初対面なのにも関わらず、前から友達かのように近い距離感で会話を紡がれた。
少し、普通じゃないなって思ってしまった。
お世辞にも友達がいそうとは思えない、でも何故か 目の前の子が言ってくれたその褒め言葉は胸にじんわりと広がり心を溶かしていく。
不思議な感覚、まるで 二人の世界になったかのような錯覚さえ覚えてしまう。
「この後、暇ですか?」
「良かったら、一緒に遊びましょう」
正直、早く帰りたくて仕方なかった
それでも誘われたなら、そう思って 僕は頷く。
どうしてこの時 君の誘いに乗ってしまったのかなんて分からなかった。
それでも 差し出されたその細くしなやかな手を握ってしまった
それを合図に目の前の子は、僕の手を引いて 駆け出していく。
夕日に照らされたシクラメン色の髪はキラキラと透けて輝いて、綺麗だった。
小さな身体に、赤いリボンが揺らめいて 見蕩れているせいか走っていても疲れなんて感じない。
普段ならきっとバテてしまうのに。
「ね、ねぇ、何処まで行くの…?」
「ボクの好きなところ!」
「特別、君に教えてあげます!」
そう言って、微かに向けてくれたその横顔は凄く輝いていて 楽しそうだった。
キラキラしてる、存在自体が宝石みたいで
でも、きっと硬度の低く脆い宝石なのだろう。
不思議な距離感と、何故か惹かれるモノ
きっとこの時点で僕は君のペースに乗せられて、君だけが生み出せる領域に引きずり込まれていたんだろうな。
暫く走っていると、古びた駄菓子屋に着いた。
この現代に駄菓子屋があるのも驚いたが、こんな田舎じみた場所があるのも驚いていた。
人気はなくて、田んぼがあって……
本当に、目の前の子だけが知っているベストスポットなんだなって感じる。
ぼんやりと立ち尽くしている中 君は中に入ると、お婆さんと楽しげに会話をしていた。
どんな会話をしているのだろう、悩んでいる中 君は戻ってくると僕にアイスを差し出す
それを受け取ると、近くにあったベンチに腰を掛けて 美味しそうに食べ始めた
僕もそれにならって、君の隣に座り アイスを一口含む。
じゅんわりと甘さが広がって、冷たさが口内を包む
「ボク、こういう放課後しか甘い物食べれないんですよ」
「……な、なんで?」
「んー?」
「うーん…なんでだと思いますか?」
「親が、…厳しいとか……」
「ふふ、じゃあ…それを正解って事にしましょうよ」
「それより、貴方の名前は?」
何処か的はずれな、一方的なキャッチボールみたいな
そんなチグハグな感覚が生まれる。
踏み込んで欲しくないのかな、そう咄嗟に思って君を見るも 君はどこかを見つめて楽しそうに笑っていた。
人のペースに乗せられるのは苦手な方なのに、君のペースに巻き込まれるのは嫌って思えなかった。
君は、自分のペースに巻き込む割に 強い自我を表にしないし、かといって適度な距離感を保ち続ける。
でもきっとこれが不愉快な人は不愉快かもしれない。
「…僕は、天谷 優」
「うーん…在り来りな名前ですね」
「僕も思うよ、優って名前なのに 何も優れた事は無いし」
「ねぇ、君は…」
「優れてなくてもいいと思います、名前が全てじゃないですし…それに 自分が知らないだけで何かに秀でてるのかも。」
「優れてないって判断するには、まだ未熟って事ですよ」
僕の問い掛けに被せるようにそう言葉を連ねていく。
僕に 何か秀でたものが秘められてる なんて思えないけれど、君が言うならきっとそうなのかも、なんて思えてしまう。
きっとそんな事はないのに。
君だって僕と同じ中学生じゃないか、なのに 未熟 だなんて大人びた事を言う
でも不愉快だなんて僕は思わなかった、事実 僕は色んな取り組みをした訳じゃない なのに、非凡で陰気臭い人間だと思い込んでいた。
「…君は不思議な事っていうか、大人びた事を言っちゃうんだね」
「まるで僕を分かった口ぶりで」
「嫌でしたか?」
「ごめんなさい、ボク…無神経にズカズカ物を言っちゃう時あるんです。でもこの癖は中々治らなくて」
「ううん、嫌じゃないよ…寧ろ……」
「寧ろ、僕は嬉しかったよ」
慣れないけれど、そう言って笑って見せた。
君はキョトンとしたけれど、すぐに蕩けたように目を細めて笑う。君の長い前髪が少し邪魔に思ってしまうくらいには 優しい目をしている君に惹かれ始めていた。
でもきっとこれは恋情じゃない、もっと 不思議で重苦しくのしかかる何か。
名前を付けれるのなら どんな名前を付けようか。
冷たいアイスを小さな口で頬張り、もぐもぐと食べていく 時折眉間に皺を寄せるからアイスクリーム頭痛が起きてるんだなって伝わる。
僕はそれ以上は何も言わずに 同じように食べていた
2人揃って食べ終わるも 当たりなんて都合のいい事は起きなかった。
「ねぇ、君はさ…友達とか、いないの?」
「ボクに友達…うーん、どんな形を友達と呼ぶか分からないので…なんとも」
「こうやって、放課後に遊びに行ったり…一緒にご飯を食べたりとかさ」
「あはは、そういうやつですか」
「それなら、いないかも」
「…そう、そっか」
そういうやつ、なんて言葉で片付けた友達という関係性 どうして"そういうやつ"という言い方をしたのか、気になったけれど探る気にはなれなかった。
君なら、色んな形がありそうだから それにきっと、深く探れば君は離れていきそうだった。
カサカサと音がすると思い、顔をゆっくりと上げて 君の手元を見れば3つ入りの小さなドーナツの駄菓子を開けていた。
僕の方に 何も言わずに差し出して来ては、僕の顔を覗き込むように首を傾げていた
その善意に甘えて、一つ手に取って口に含む 仄かに広がるこし餡の甘さとドーナツ生地の甘さ、砂糖特有の無機質な甘さは疲れた脳を癒してくれる。
「ボク、こういうの好きです」
「甘いもの、好き」
「でも、家じゃ食べれないんだろ?」
「そうですね、だから…時間になるまではここでこうやって一人食べてます」
「時間って、…門限とか?」
「そうですね、門限です。大体は…18時までには帰らないといけなくて」
「じゃあそろそろ帰らないとじゃないの?もう…17時半だよ」
「…ふふ」
そんな風に笑って誤魔化しては、もぐ と小さなドーナツを口に含んでは此方を見ていた。
煮詰めたその瞳は 僕の何処を見ているのだろう
君の目には僕がどんな風に映っているのだろう。
知りたくて、堪らなかった。
女の子にしては細すぎる脚や腰周り、けれど男にしてはしなやかすぎる手足や首の細さ
「天谷くんは何年ですか?」
「僕は…3年生だよ」
「じゃあ、センパイですね」
「天谷セーンパイっ」
「やめてよ、先輩なんて柄じゃないんだからさ」
「いえいえ、ボクからしたらセンパイなので」
「……さっきから、君は僕の事を聞くのに、君は教えてくれないんだね」
思わず口をついて出てしまった、頭では言わないでおこうなんて言っていたくせに。
なのに、僕の頭の中で疑問が湧き上がって 気付けば口をついて出ていた
罪悪感や後悔がすぐに押し寄せてくる
聞かなきゃ良かった、折角僕なんかと会話してこうして放課後に連れて来てくれて…それなのに、きっと聞かれたく無いかもしれない事を聞いてしまうなんて
君の善意や良心、他の感情だって踏みにじったかもしれない、どうしよう
そんな考えをよそ目に 君は少し考えてから笑って、手に持っていたそのドーナツを僕の口に押し当てた
「だって、知ってる事より知らない事が沢山ある方が魅力的で ボクの事、もっと気になるでしょう?」
口に押し当てられたそのドーナツを咥えて、頬張る。
そのせいで、君の答えには何も返せなかった。
返したくても、返す言葉もなくて その通りだな、なんて思っていた。
でもやっぱり、君の答えはどこか的はずれで浮ついたものだ
微笑んだまま ゴミを僕に押し付けると、立ち上がりスクールバッグを肩に掛けて
「それじゃ、今日はここまで」
「もっとボクを知りたいならまた明日ね」
そんな言葉を残して、歩いて行ってしまう。
追い掛けたい、引き止めたい、でも 君の言った言葉が重りのように僕を縛り付けてそうさせてはくれなかった。
おまじないの様で、足が竦んで 身動きも取れないまま君の歩き去っていく後ろ姿を見つめていた。
明日もまた…
「君に会えるんだね」
そう呟いて、口に広がる甘い後味を噛み締めていた。
君とのまた明日がある事が、何故か嬉しく思えた
今回が初めてなので、拙い点がありましたら申し訳ございません(> <)
それでも、天谷くんと 君 と呼ばれる子の何気なく何処か重苦しくなっていく物語を見届けて頂けると幸いです。
この不思議な雰囲気を気に入った方は次回をお楽しみ下さいませ




