第44話 ゴッドブロウ
色々試した結果。
俺はバグリンの翼で飛びながら、空中から雷の刃をぶち当てるだけのお仕事が最も効率が出ると判断し、そのスタイルでワニ島のワニ共を乱獲する。
え?
空を飛んでたらドロップが拾えない?
どうせ大したもの落とさないから別にいらない。
なので放置!
ゲームだと効率狩場で稀に目にする光景だが、まさか自分がそれをやる日が来るとは思いもしなかったもんだ。
「1時間で10%は破格だな」
このまま後9時間狩りを続ければ、もうレベルアップである。
経験値半分持っていかれているとは思えない速度。
正に高効率だ。
が……
「けど、狩り時間より索敵時間の方が圧倒的に多いんだよなぁ」
敵は俺とバグリンの雷の刃数発で倒れてしまう――バグリンは飛びながらでもニードルが使える。
そのため、狩り時間の大半以上を索敵が占めてしまっていた。
最初は無視する予定だった、アーチャーやソーサラーまで狩ってなお、だ。
レベリングで効率がいいのは、範囲狩りを除けば、いかにHP当たりの経験値比率が高い敵を殴り続けるかがポイントになってくる。
逆に、索敵時間が長ければ長い程効率は落ちてしまう。
つまり、だ。
索敵が大半を占める今のワニ島での狩りは、俺にとってベスト効率ではないという訳である。
もちろん、ここで99まで上げるのは難しくはない。
実際、ゲームの時はキャラを99まで上げてる訳だし。
でも……効率を上げられるなら追求したいじゃん?
だってゲーマーだもの。
「もっと効率のいい場所に移るとするか」
「あの、タカダ様。場所を移されるのでしたら、その前に出来ればワギャンエンペラーを討伐して頂きたいのですが」
狩場の変更を決めると、ユミルがボスを討伐して欲しいと言って来た。
正直、倒すこと自体は楽勝なので受けても問題ない。
今は火力が偉い事になってるからな。
多分サクッとやれるはず
……けど、アイツ倒してどうするんだろうか?
「それは構いませんが、何か目的でもあるんでしょうか?」
「あ、はい。錬神術の素材である、帝王の鱗が必要でして」
「ああ、成程」
帝王の鱗が必要なのか。
そういやこれって、ハーミール教のイベント進行の為に寄進する用のアイテムだったな。
聖女の錬神術用に求めてたって訳か。
因みに、俺はそのイベントを熟した事はない。
報酬が渋かったから。
貧乏教の二つ名は伊達ではないのだ。
「分かりました。俺で良ければお手伝いします」
なんかいいもの出来たらまた貰えるかもしれないし、断る理由はない。
「ありがとうございます」
という訳で、俺は早速島の中央に陣取るエンペラーの元へと向かう。
「バグリン、飛行は解除だ」
『はーい』
エンペラーは、ランサー達の倍ぐらい横幅がある超巨体である。
一言で言うとデブ。
なので動く速度はそれ程早くないのだが、こいつは離れた相手の元までワープする能力があった。
そのため引き狩りには向かないのだ。
パーティーで狩る場合、後衛の火力やヒーラーにタゲが移らない様にするのが基本なんだよな、こいつ。
見た目の割に火力はそれ程でもないため、移る、イコール壊滅的な状況になる様な事はない。
だが立て直しは必要となってくるので、その手間を省くためにヘイト――ゲーム内における敵の攻撃選択基準――管理は重要となる。
まあこれはボス全般で言える事だが。
「聖女様は離れていてください。で、俺が手を上げたら自己回復でHPの回復をお願いします」
「分かりました」
回復行為はヘイトが溜まりやすい。
そのため、範囲回復などを連発するとヒーラーにボスのターゲットが移る事がままある。
なので、彼女には少し離れておいてもらう。
まあ、今の俺は超火力だし――与ダメが多いとその分ヘイトが溜まる――単体回復は範囲回復程ヘイトが溜まらないので、彼女にターゲットが移る心配は少ないが。
念のためだ。
「じゃあ行くぞバグリン。ワープで近づかれたらアシッドバレットを撃って、デバフが入ったらそれ以降はニードル連打だ」
『はーい』
ユミルのバフは移動中にかけなおして貰っているので、戦闘準備は万端だ。
聖女様が遠く離れたのを確認し、俺は両手の短剣を振るう。
先制の神雷の刃をおみまいしてやるために。
「ぶおおおおおおおおお!!」
攻撃が当たり、エンペラーが野太い声で吠えた。
当然その間も俺は短剣を振るい続ける。
攻撃を止める理由もないからな。
ガンガンダメージを稼がせて貰うぜ。
「ぶおおおおおおおおお!!」
エンペラーが再び雄叫びを上げたかと思うと、次の瞬間には俺の目の前に現れる。
ワープだ。
奴は転移と同時に両腕を振り上げ、頭上から俺めがけて叩きつけて来た。
それを俺は横っ飛びで躱す。
「よっと!」
但し、完ぺきではない。
腕の直撃は確かに躱したが、こいつのこの叩きつけ攻撃には水属性の衝撃波もセットになっている。
放射状に広がるその攻撃は躱すのが少々難しく、俺はそれを喰らってしまう。
……それ程ダメージもないから、基本衝撃波は無視でいいな。
ユミルのバフもある為、そのダメージはバグリンと合わせても微々たる物だった。
頑張って躱すだけの意味がない。
なので必要経費と割り切り、動いた方が効率がいいという物。
ユミルによる回復やエリクサーもあるしな。
「バグリン!バレットだ!」
『はーい!ぷぷぷぷぷぷ』
エンペラーが連続で攻撃して来る。
武器を持っていないので素手で。
俺はそれを躱しながらバグリンに指示を出す。
『はいったよー』
え?
一発でか?
バグリンのアシッドバレットには、敵の防御力を下げる効果がある。
だが、大抵のボスにはこの手の弱化効果に耐性がある物だ。
そのため一発で成功する事は稀なのだが……
運が良かったのか。
それともバグリンのデバフはとんでもなく成功率が高くて、軽く耐性を貫通できたのか。
まあ普通に考えれば前者なのだが、これまで雑魚相手とは言え、バグリンのデバフが失敗した事はない。
なので後者の可能性も十分考えられた。
バグモンスターだし、そもそも耐性完全無視の可能性も……いやまあ、流石にそれはないか。
「ぶおおおおおおおおお!!」
エンペラーが再び吠え、両腕を振り上げる。
例の衝撃波付きの攻撃だ。
「アサシネーションキル!」
俺はそれをスキルで躱し、奴の背後にクリティカル攻撃を叩き込む。
現在、武器オプションと合わせて、アサシネーションキルによるクリティカル率は100%となっている。
「おっと」
背後に立つのは赦さんとばかりに、落下地点に、エンペラーが尻尾で周囲を薙ぐ横回転攻撃をして来る。
馬鹿みたいに長くぶっとい尻尾の高速横殴りを回避するのは難しく、しかもこの攻撃は結構威力が高かった。
そのため、衝撃波の様に無視するのは得策ではない。
――なぜなら痛いから。
なので――
「【転】!」
――俺はタリスマンの転移効果を使用し、後退する形でその攻撃範囲から退避する。
「そういやまだ【破】の効果を使った事ないよな」
せっかくなので使ってみるとするか。
横薙ぎの尻尾攻撃が終わった所で一気に間合いを詰め、俺はゴッドブロウを発動させる。
「ゴッドブロウ!」
右手に持つ光の刃が強烈な虹色の輝きを放つ。
俺はその刃を、ワギャンエンペラーの腹部へと全力で叩きつけた。
「――っ!?」
直撃と同時に、凄まじい閃光が炸裂する。
そして吹き飛ぶ。
何が?
エンペラーの巨体が、だ。
「吹っ飛ばし属性があるのか……てちょっと待て」
吹っ飛んだエンペラーが起き上って来ない。
倒したのならその体は消え、ドロップが出るはずなので死んではいないはずだ。
つまりこれは――
「ひょっとしてスタンか!?」
――気絶だ。
スキルや魔法の中には、相手を気絶させる様なものがあった。
だがその手の行動不能系は、ボスには全く効かないのが定番である。
因みに、吹っ飛ばしの方もかなり耐性が高いので早々決まる事はない。
「吹っ飛ばし所か、耐性ガン無視のスタンまでついてんのかよ」
威力の程はよく分からないが、この状態異常二種がボスに効くだけで十分過ぎる程使う価値はあった。
もうなんなら、ノーダメージでも優秀レベルである。
「何にせよ……殴り放題!ボーナスタイムだ!バグリン!ぼっこぼこにするぞ!」
『ぼっこぼこー』
相手が動けないのをいい事に、俺達は狂った様に攻撃を入れまくる。
「ひゃっはー!」
『ひゃっはー』
ゴッドブロウがかなり効いていたのだろう。
結局エンペラーはそのまま目覚める事無く昇天した。
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