第39話 安心安全
――町の外。
『ばぐうぃーんぐ!』
バグリンが叫ぶと、その体から大きな翼が生えた。
これはバグリンの新スキル【バグウィング】だ。
その効果は名前そのままで、翼が生えて飛べる様になる。
『ぶいーん』
俺の肩から飛び上がったバグリンが、翼を羽搏かせ自由自在に空を飛ぶ。
その速度はとても早く、本人はとても楽しそうだ。
「おー、はやいはやい」
ぶっちゃけ、バグリンが空を飛べたからと言ってそこまで大きなメリットはない。
敵の気を引きつつ、空中で攻撃を華麗に回避できるのなら話は変わって来るけど、正直、あんまそういうのは期待できそうにないんだよな。
変な動きしてバンバン攻撃喰らわれても敵わんし、結局、俺の肩に乗せておくのが一番無難だ。
ただまあこのスキルに関しては、一つ試したい事があった。
それは――
「バグリン。俺と一緒に飛べるかちょっと試してみてくれ」
――俺の翼になれるかどうか、である。
これが出来る様なら、あの戦法が取れるからな。
そう、皆大好き引き狩りだ。
これが出来れば、弓を使って超安全に狩りが出来るという物である。
……まあレジェンド武器があるから雑魚相手に使うかは微妙だけど、もし長時間運用も出来る様なら、ボス相手に引き狩りが出来て激熱だ。
『うん、わかったー』
バグリンが俺の肩に戻る。
そして翼以外の部分が紐状になって伸び、俺の上半身に巻き付いた。
フォルム的には、背中に翼を背負ってる姿を想像して貰えばいいだろう。
「まずは浮かび上がってくれ」
『はーい』
バグリンが羽搏くと、俺の体がふわりと持ち上がる。
そしてそのまま空中で停止した。
羽は動いていないが、『何で浮いてるんだ?』なんて疑問は魔法のあるファンタジー世界では野暮ってもんである。
気にしたら負け。
「バグリン、きつくないか?」
『だいじょうぶー』
浮くだけなら負荷は気にしないでいい様だ。
「じゃあ次は動いてみてくれ」
『うん!』
バグリンが再び羽搏くと、俺の体が高速で空中を移動しだす。
若干引っ張られてる感はあるが、この程度なら問題なく弓を扱う事が出来そうだ。
「バグリン。俺を連れて飛んできつくないか?」
『だいじょうぶだよー。あるじといっしょ、たのしいー』
自己申告を信じるのなら、負荷については大丈夫そうだ。
ただ、テンションが上がってる時はそういうのを感じない傾向にあるから、どの程度維持できるのかはきっちり確認した方が良いだろう。
「よし、じゃあ次はターボだ」
ターボはバグウィング中にだけ使える派生スキルで、瞬間的な高速移動を行うスキルとなっている。
『たーぼ!ぐいーん!』
「うお!こりゃすげぇ!」
体が急激に引っ張られ、一瞬で数十メートル先に移動する。
もはや瞬間移動レベルの高速移動と言っていい。
「バグリン。体は大丈夫か?」
急激な加速。
それを紐状になって俺に絡んでやったのだ。
負担がかかっていてもおかしくはない。
まあHPは減ってないから、命に関わったりはしないだろうけど……
『だいじょうぶだよー』
「そうか。よし、じゃあどの程度飛び続けられるか試してみよう」
次は持続力のテストだ。
『はーい!びゅおーん!』
この後、2時間程バグリンに担がれて飛び回るが特に問題は起きなかった。
これだけの時間高速に飛び続けられるのなら、自然回復を持っていないボスを引き狩りする事が余裕で出来そうだ。
安心安全のボス狩りとか最高だぜ!
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