表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/190

69 任務完了!




 ポールウェポン・ランク『Ⅴ』スキル。

 武技『グリム・リーパー』。

 死神の名前を持つその武技は、相手のすべての防御特性を無効化し、3回連続の斬撃によって相手の命を刈り取る。

 この私、ファーが使える、今の最高の技だ。

 どうかなぁと思って試しに使ってみたけど……。

 まあ、うん。

 オーバーキルでした。

 あっさりすぎて、この武技は強いのか弱いのか、よくわからなかったです……。

 残念。


 巨大なオークを斬り裂いて、血肉を散らばらせておいて……。

 我ながら呑気なものではあるのですが……。

 なにしろ羽崎彼方の基準で考えれば、恐怖に打ち震えて正気度チェック失敗、一時的狂乱くらいにはなる場面だ。


 実は、実際、最初は怖くて震えてどうしようもなくて……。

 いつものスキル『自動反応』に頼っていたんだけどね……。

 だけど、襲われまくって斬り刻む内……。

 まあ、こんなものかぁ、という妙な割り切りが自分の中で生まれて……。

 そもそもダンジョンでは、とっくに大量に倒しているしね、私……。

 違いは死体が残るかどうかだけで……。


 中盤からは自分で斬りまくった。

 我ながら慣れるのは早かった。


 私は自分の手のひらを見つめる。

 うん。

 まったく震えてもいない。


 と。


 のんびりしている場合ではなかった。


 ヨランとラッズさんが、大ダメージを受けているのだった。

 ヨランは体を変色させて、すでに意識がない。

 ラッズさんは足が折れていた。


 私はすぐに『リムーブ・カースⅩ』と『ヒールⅩ』の魔法を、なんとなく呪文っぽい言葉をつぶやきつつかけてあげた。


 2人は全快した!

 よかった!


「大丈夫ですか? まだ痛みとかはありますか?」


 私はラッズさんに確認した。


「いや、大丈夫だ……。ありがとな、ファー。この礼は帰ったら必ずさせてもらうぜ」

「いいですよー、そういうのは。今回はチームなんだし」

「そうか。ありがとよ」

「あはは」


 頭を何度も下げられて、私は恐縮して笑った。


「な、なあ……。ファー……」


 ヨランが、おそるおそるの様子で私に声をかけてくる。


「うん。なぁに?」

「俺も、ありがとな。よく呪いなんて解けたな……」

「まあねー。私、すごいでしょー」


 えへん。


「おう。すげーな。降参だ」

「へー。素直だねー」

「あのな、さすがの俺も命を助けられちゃ負けくらい認めるぞ。おまえ、強いんだな。男爵様が認めて聖女様が友達にするだけはあるぜ」

「まあねー」


 ヨランに称賛されて、私は鼻高々で大いに上機嫌になった。

 ヨランが、そんな私をじっと見つめてくる。


「なに?」

「あ、いや。なんでも」


 すぐに顔は逸らされたけど。

 まあ、いいや。

 クラウスさんにゼンさん、それに彼等のパーティーメンバーが走ってきたし。


「すみません、すぐに駆けつけられずに。こちらもオークと戦っていまして。しかし、どうやら無事におわったようですね」

「ああ。ファーのおかげさ。オークの上位個体が出てな」

「そのようですね……」


 地面に転がっていた巨大オークの首を見て、クラウスさんは言った。


「――これは、ロード級ではないのか? 闇の魔術まで使ってくるSランクに届くこともある難敵のはずだが、よく勝てたな」

「ファーのおかげさ」


 ゼンさんの言葉に、ラッズさんは繰り返して答えた。


「ともかく無事でよかった」

「そっちはどうだ?」

「ああ、こちらもあらかた片付いた」

「ならこれで俺等の仕事はおわりか」

「うむ。あとは死体を解体して、耳と魔石を持ち帰るだけだな」

「だな。まあ、それが一番の難仕事なんだがよ」

「まったくだ」


 そういえばそうだった。


 ダンジョンの場合、倒せば魔物は消えて、魔石だけが残る。

 だけど野外では違う。

 魔物は倒しても消えない。

 魔石がほしければ、胸に刃を突き刺して、えぐり取る必要があるのだった。

 あと今回は、討伐の証明として耳も必要だった。


「ファー、当然だが、オーク・ロード、か、そいつの耳と魔石はおまえのもんだ。俺等は一切権利を主張しないからもらってくれ」


 ラッズさんが言う。

 他のメンバーもうなずいていた。


「えっと。なら、せっかくなので……」


 正直、死体をえぐるのは嫌だけど、レア個体の魔石はほしい。


 みんながそれぞれの作業を始める。


 オーク・ロードの体は、いくつかに分断されていた。

 私がやったものだ。


 魔石は、みぞおちのあたりにあるらしい。

 残念ながら、肉の中だった。


 私はおそるおそる、でも、しっかりと狙いを定めて――。

 ハルバードで死体を斬った。


 すると……。


 ぶしゃっと肉が溢れて――。


「ひゃああああああああっ!」


 私は尻持ちをついて倒れた。


「どうした!?」


 すぐにヨランが駆けてきた。


「に、に……が……」

「ににが?」

「肉が弾けてぇぇぇぇ! ぷしゃってしたぁぁぁぁ!」

「は? 何言ってんだよ、おまえ、今さら」

「そうだけどぉ! ぷしゃってしたのおおおお!」


 思い切り呆れた顔をされたけど――。

 怖いものは怖いのだ。

 まあ、うん。

 自分でもおかしな感覚ではあるけど。

 戦闘中には何も感じないのに、こうして平素に戻ると急に怖く感じるのは。

 彼方とファーの、心のバランスの問題なのだろうけど。


「さっさとやれよ」


 ヨランは手伝ってくれず、他のオークの魔石取りに戻ってしまった。


 私はおそるおそる――。


 怖いけど、魔石はほしいので――。


 頑張って取り出しました。


 オーク・ロードの魔石は、以前に手に入れたミノタウルスの魔石よりも大きかった。

 石の中で渦巻く光は黒かった。

 闇属性の魔石のようだ。


 現代日本に持ち帰って、時田さんに見せてみようかな……。

 小さな魔石で1億円なら、これはいったい、いくらになるのだろうか……。

 ごくり……。

 私、とても気になります……。


 以前は怖気づいて10万円にしちゃったけど……。


 1億円とか……。


 もらえるならほしいよね……。



 魔石の回収は、時間はかかったけど、問題なくおわった。


 私は、もしかしたらシータがいたりして、と思って――。


 みんなが魔石を回収する中、見張り役としてあたりの様子を見て回ったけど、残念ながらシータの姿はなかった。

 取り逃げは別の場所でするのだろう。


 かくして。


 生きたオークは村から消えて――。

 他の魔物が作業の途中に攻めてくることもなく――。

 村の解放は成し遂げられた。

 残念ながら、村に生存者はいなかったけど。


 オークの死体処理や村の清掃については、明日、避難していた村の住民と共に低ランクの冒険者たちが行うそうだ。

 腕に自信がない者には、そうした仕事もあるらしい。

 大変だろうけど頑張ってほしい。


 私たちは村を出て帰路についた。


少しでも見えもらえるように、タイトルを長くしてみました!

また変えるかもですが、許してください\(^o^)/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] タイトル長い ファーの行動がふわっとしてるから分かるようで分からないタイトルですね
[良い点] いつも楽しく読んでます!  今回の彼方メンタルは、外国人の人が魚の活造りをみて、死んでると思ったら頭が動いてて驚く感じかな(笑) もしくはお医者様でも、血が苦手な人もいるしね! 外科の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ