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6 陰謀




 最悪、リアナを抱きかかえて逃げよう。

 今の私ならそれくらいできる。

 なんといっても、まるで超人みたいな身体能力をしているし。


 近づいてくるのは武装した人間の集団だった。


 私は目を凝らして、よく彼らのことを見た。


 前列にいるのは、鉄の鎧を着て、剣と盾を持った者たちだ。

 7名。

 騎士だろうか。


 そのうしろには、3人のローブ姿の人がいた。

 こちらは魔法使いだろうか。


 まだ向こうは、こちらには気づいていない様子だった。


「リアナ様ー! おられますかー! おられたら、どうかお返事を下さいー!」


 そんな探す声が聞こえる。


「私はここよ、ザルタス! ――ファー、安心して。来たのは私の身内ね」


 リアナの声を聞くと、全員が一斉にこちらに走ってきて――。

 すぐにお互いに、普通に姿を見ることのできる距離となった。


 で……。


 はい……。


 私は剣を向けられました。


「貴様ぁぁぁ! よりにもよって、闇の女王の姿を騙るとは何者ぞ! 皆、油断するな! 対象は幻影系の魔物と推定される!」


 ただそれについては、リアナが取りなしてくれた。


「やめなさい! ファーは私の命の恩人よ! 私が勝手に動いて罠にかかったばかりにみんなには迷惑をかけたけど、私は見ての通りに無傷だから!」

「し、しかし……」

「この子は、散歩でここに来ているだけよ」

「ここはダンジョンですぞ! 闇の眷属でなければ散歩できる場所ではありません! そもそもここは5日前から閉鎖されております!」

「その前から滞在していたんだって。そもそも私は、ファーの回復魔術で瀕死のところから助けてもらえたのよ。闇の眷属に回復魔術は使えないでしょ。ファーは、たまたま銀色の髮と金色の瞳を持ち合わせたエルフの冒険者なの。きっと今まで見た目のせいで苦労して生きてきて、だから1人でダンジョンにいたのよ……。でも、それなのに、ミノタウルスに襲われていた私を見捨てることなく勇敢に助けてくれたのよ」


 私はリアナの言葉を受けて――。

 えへへ、と笑ってみせた。


 お願いだから、攻撃してこないでね、と心の中でお祈りする。

 自動的に反撃しちゃうからさ……。


 リアナが私に言う。


「実は私、『未来視』のギフトを持っててね。ここにはそれで来たの。このダンジョンに近日中に災禍が生まれるようだから――。私になら理由が視えるかもと思って」


 厄災って、まさか私のことだろうか。

 思わず私は思ったけど、頑張って口にはしなかった。


 騎士たちは、まだ剣を下ろしてくれない。

 今にも襲いかかってきそうだ。

 逃げちゃおうかな……。

 殺し合うのと比べたら、まだヒロと顔を合わせる方がマシだし……。


 私がそう思っていた時だった。


「ふふふふ。ははははははははははははははははは!」


 突然、うしろに控えていたローブ姿の男の人が――。

 明らかに狂気じみた、大笑いを始めた。


 彼は言う。


「なるほど! なるほど! リアナ様の『未来視』は、特定には至らずとも魔族の影をも見ていたというわけなのですね! まさかまさか、かの偉大なる御方の写し身までをも用意して、この私を釣り上げようとは――。いいでしょう――。御方への敬愛のすべてを込めて、その不敬への断罪をして差し上げようではありませんか――」


 いったい1人で、何を言っているのか。

 私にはわけがわからなかった。


 ただ、どれだけ私にはわけがわからなくても事態は進んでいく。


 ローブの男の人の体から黒い霧が吹き出す。


「この瘴気は――! いかん! 皆、離れろ! まさかロマー! 貴様!」


 隊長らしきザルタスさんという中年の騎士が叫んだ。


「くくくく。ええ、その通りです。私こそが、密かにこのダンジョンで大召喚の準備を進めてきた闇の眷属です。そこのエルフのような偽物ではなく、本物の、ね」

「なっ!」

「とはいえ、実はすでに準備は整っているのですよ。くくく。皆様には、召喚されし我が軍勢の最初の贄となってもらいましょう!」


 渦巻く黒い霧の中、ローブの男の人が両腕を大きく広げた。


「ああ、そうそう。最後に自己紹介をしておきましょう。私は魔人アンタンタラス。魔王ジルゼイタ様が配下にして『不滅』の名を持つ者」

「バカな……。その名は知っているぞ……。知らぬ者など、いるはずがない……。不滅のアンタンタラスと言えば、100万の死霊の軍勢を率いてサイルーン王国を崩壊させ、その力は魔王すら上回ると怖れられる者ではないか!」


 ザルタスさんが叫んだ。


「ファーは逃げて。これは私たちの問題。ファーが関わる必要はないから」


 リアナが悲壮なことを言う。


「リアナ様もお逃げ下さい!」

「早く!」

「ここは命に代えて、我々が食い止めます!」


 騎士たちの叫び声が響いた。


 そんな中――。


 私は、立体映像のようなユーザーインターフェースを見ていた。

 実はさっきからログが流れている。


『闇の祝福(微)を得ました:経験値+10』

『闇の祝福(微)を得ました:経験値+10』

『闇の祝福(微)を得ました:経験値+10』


 それが続いている。

 多分、闇の祝福とは、黒い霧のことなのだろう。

 闇と黒って、近そうだし。


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