表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/190

46 家族の食卓








「ごめん、お父さん、お母さん。まだ買ってもらって半年なのに、スマートフォンが壊れて動かなくなっちゃったの」

「ははは。気にしなくていいよ、ヒロは無事だったんだから」

「そうね。本当に無事でよかったわ」


 夜。今夜の食卓は、家族揃ってのものだった。

 私はもちろん魔法で変身して、羽崎彼方として椅子に座っています。

 ヒロも病院から帰ってきていた。

 ヒロたちのことは時田さんがそうすると言っていた通り、不運にも何かの災害に巻き込まれたということになっていた。

 検査の結果も問題なしで、ヒロの顔色はよかった。


 夕食のメニューは、なんと焼き肉だった。

 ホットプレートでそれぞれに焼いて、パクパクするのです。


「あの、それで、なんだけど……。スマホがないと生活できないし、できれば……」

「ああ、いいよ。今月はボーナスも出るし、新しいのを買いに行こう」

「ありがとう、お父さん!」


 ヒロがぱぁぁっと表情を輝かせる。

 基本的にクールなヒロがそんな顔を見せるのは珍しい。

 スマホは、よほど生活の基軸なのだろう。


 私もPCなしでは生きていけないし、ヒロの気持ちはよくわかります。

 うんうん。

 私が理解した様子でうなずいていると――。


「何よ、バカナタ。私にかこつけて、またオネダリするつもり?」

「こら、ヒロ。お姉ちゃんをバカなんて言っちゃいけません」


 お母さんがヒロを叱ってくれる。


「だって、ついこの間、動画用のマイクを買ってもらったばかりでしょ。どうせ成果も出ていないのに――」


 ん? どうしたんだろう。

 悪態の途中なのに、急にヒロの勢いが消えた。


「……まあ、いいけど。動画を作るのは、悪いことじゃないわよね」


 あれ? 何故か肯定して食事に戻りましたよ。

 ヒロがホットプレートに牛肉の切り落としを乗せて、箸で押し付けて焼く。


「それでカタナは何がほしいんだい?」


 お父さんが優しく聞いてくれる。


「ううん。私は今は、ほしいものはないよ、ありがとう」


 なにしろ今の私にはお金がある。

 おすしを食べて服を買っても、まだ3万円も残っているのだった。


 3万円……。


 それはまさに無限の可能性だ。

 新しいPCを組み立てることはできないし、新しいグラフィックボードを買うだけでもギリギリの金額ではあるけど……。


 それでも、いろいろなものは買えるのだ。


 しかも……。

 しかも、ですよ……。


 異世界のアイテムは、時田さんが密かに買い取ってくれるという。

 魔石1個で10万円なのだ。

 うん。

 はい。

 正直、今の私の力を持ってすれば、100万円くらいパッと稼げちゃう気がする。


 くくくくくくく。

 ふふふふふふ。


 私、人生に買ってしまったのかも知れないね……。

 ファー、ありがとう!

 今は私だけど!


「1人でいきなり笑うのは不気味だと思うけど」

「あ、うん。ごめんなさい」


 ヒロに冷静に注意されて、私は現実に戻った。


 まあ、ただ。


 異世界の品を迂闊にこちらの世界に持ってくるのは、リスクが高い。

 どんなトラブルになるかわからない。

 いくらお金になるからと言っても自重すべきだろう。

 本当にほしいものができた時だけにしよう……。


 やはり私には動画だ。

 収益化を成し遂げて報酬をもらうのだ。

 インターネットの世界で生きていくのが私には一番だと思う。


 頑張ろう。

 おー。


 というわけで、食事の後――。

 シャワーを浴びてサッパリとしたところで――。


 今夜はゲーム配信をすることにした。

 いつもの日課だ。


 ただ、何かにチャレンジするほどの気力はないので、いつものオンラインRPGで、いつものようにダラダラ遊ぶだけだけど。


 私はPCを起動させようとして――。

 モニターに映る羽崎彼方の顔を見て、ふと思った。


 変身魔法を解く。


 するとたちまち、私は銀髪で金眼の、すんごい美少女さんになった。

 今の私の本当の姿だ。

 正直、ファーでいる方がリラックスできる。

 彼方の姿でいると、変身魔法の継続で微妙に減っていくMPの感覚に、なんとなくの違和感を体が覚えるのだ。

 ちなみにMPについては、減るには減るのだけど……。

 減った分以上に自動回復するので、結果的には減っていないですが。


「どうしようかなー」


 今夜は、ファーの姿で配信しようかな。

 カメラはつけていないので、姿が映ることはないし。

 それにぶっちゃけ、ファーの声の方が綺麗だ。

 ファーの声で楽しくしゃべれば、私の下手プレイでも人気が出るかも知れない!


「よし。やってみよう」


 何事も、まずは試してみるべし。

 だよね。


 私はファーの姿のまま、マイクをセットして、ゲームを起動させた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ