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172 リアナといろいろ




「なんか、あれね」

「どうしたの?」

「こういうのってさ、普通、もっと劇的なものよね。ほら、ファーがさ、キナーエで本当の力に目覚めた時みたいに」

「あはは……。それは、ね……」


 否定はできませんが。


「私も、もっとさ、こう、世界のピンチみたいな場面で劇的に目覚めたかったわ。こんなの完全に遊びの場面なのに」


 というわけで。


 めでたく光の魔力に目覚めたリアナですが……。

 その表情は、なんとも微妙なものなのでした。


 とはいえ、そこは私の最初のオトモダチであるリアナ。


「でも、ま、力は力か! すごいわよね、私! ついに本物の聖女なのね!」

「うん。おめでとー」


 ぱちぱちぱち。

 私は拍手して、大いに称えるのでした。


「ありがとう。これでやっとメルフィーナ様にも胸を張れるわね。私はついに期待に答えることができましたって。これからは本当にお力になれます、って」

「そうだね」

「いやー、でも、本当にアレよねー。メルフィーナ様がいて下さるから、聖女とか言っても気楽でいいわよねー。あははー」


 リアナは本当に、メルフィーナさんのことを尊敬しているようだ。

 心からの爽やかな笑顔になっていた。

 頼り切っている、というような気もするけど、それはまあ、別にいいよね。


「じゃあ、戻ろうか」


 私は言った。


「え」


 すると心底、リアナに驚いた顔をされた。


「え、って。どうしたの?」

「いや、だって、私たち、ダンジョンの調査に来たのよね?」

「うん。異常はない感じかな」

「そうなんだ……?」

「うん」


 私の感じ方は、自分でいうのもなんだけど、正確だと思う。

 その私が違和感を覚えないのだから、このダンジョンに異常はないだろう。


「ねえ、ファー」

「どうしたの、リアナ?」

「せっかくだし、少しは探索しましょうよ! 何かあるかも知れないでしょ!」

「……ねえ、リアナ。もしかして遊びたいの?」

「そうよ! 私はダンジョンを探索して、その後は異世界を観光して、夜はファーの家族と一緒にお食事がしたいの!」


 実に素直な言葉が返ってきた。

 私が返事に迷うと、


「だって、今日がおわったら、また大忙しなのよ! ファーとだって、正直、次にいつ遊べるかわからないわよね!?」


 リアナはさらにそう訴えた。


「それはそうだね」


 私は納得した。

 私はね、うん。

 無職の子なのでいつでも自由なんだけど……。

 リアナはそうではないしね。

 特に光の力に目覚めて、メルフィーナさんの力になろうとするのであれば。

 待っているのは、きっと激動の日々だ。

 あるいは、さらなる修行の日々か。

 どちらにせよ、私のようにのんびりふわふわとはできない。


 私たちはしばらくの時間をダンジョンで過ごした。

 ダンジョンを探索しつつ、魔物が出ればリアナが戦って、私は撮影した。

 おかげで聖女様の貴重な素材がたくさん手に入りました。

 久しぶりに編集を頑張れそうだ。

 もっともアップロードするかは未定だけど。

 でも、うん。

 ウルミアやフレインもそうだけど、みんな、いいよとは言ってくれているので、そろそろ解禁も有りかも知れない。

 さすがに女の子が元気に動いていれば、私の映像が本物だと理解されるだろう。

 現状、私の異世界動画は、ただのCGと思われている。

 異世界だとは信じられていない。

 とはいえ、本気の本気で異世界の映像だと思われて大騒ぎになるのはかなり面倒なことだと今では理解もしている。

 ただ、うん。

 それでもやっぱり、動画投稿者としてはね……。

 大いに世界を驚かせて、チヤホヤされたい本音も未だにあるのです……。

 でも、まあ、他人を出すなら、まずは自分が出るべきなのか。

 リアナたちだけ前に出して自分はうしろにいるというのは、なんだか違う気もする。

 うーむ。

 悩むところなのです。


 ダンジョンについては、やはり特に異常はなかった。

 お腹の空いたところで、私たちはメーゼに戻った。


「聖女の服だと目立つし、うちで何か食べましょう。異世界に行けるのなら、私は向こうの服にも着替えたいしねっ!」


 気がつけば時刻は午後だった。


 メーゼは落ち着いていた。

 暴動が再発することも、他の謎モンスターが現れることもなかった。

 残念ながら男の素性は、まだ明らかにはなっていなかったけど。


 私たちは、アステール侯爵家のお屋敷で遅めのランチをいただくことにした。

 ランチが出来るまでの間に、リアナは洋服に着替えた。

 その服は以前に日本に来た時、石木さんが買ってくれたものだ。


 突然のことではあったけど、ランチは綺麗に作られて出てきた。

 さすがは侯爵家。

 リアナと2人、優雅に食堂でいただく。


「で、リアナ。本当にうちに来るの?」

「もちろんよ! パンネロ、私は今夜、ファーの家にお泊りするからね!」


 お屋敷で合流したメイドさんにリアナが告げる。


「ファー様、私もご同行は可能でしょうか? お嬢様を1人で泊まらせては、旦那様からお叱りを受けてしまいます」

「わかりました。ご招待しますね」

「ありがとうございます」

「パンネロも来るのね! ふふー。本気で驚くわよ! ファーの世界はすごいから! あ、ねえ、パンネロ! すごいと言えば、私、ふふー、ねえ、どうかな?」

「はい。今日もお嬢様はお元気一杯ですごいですね」

「そうじゃなくて! ほら、光とか、さ」

「はい。今日もお嬢様は天の太陽にも等しく光り輝いていると思いますよ」

「だーかーらー、そうじゃなくてー!」


 リアナのメイドさんは、いろいろ大変そうだ。

 仲は良さそうだけど。


 ちなみにリアナは、別に見た目的にはキラキラとは光っていない。

 祝福の効果も強化魔法の効果も、もう切れているしね。








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