表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

144/190

144 ストレス発散!?




「……オトコアサリ、もっとしたかった」


 フレインがシュンとする。

 私たちは表通りに戻った。


「いや、うん。あいつらは確実にいいヒトではなかったと思うけど、それでもね、一応、さすがに今のはマズイからやめとこうね」


 むしろこちらが捕まる。


「ファー様。私はこの高ぶる気持ちをどうにかしたい」

「どうにかと言われても……」


 困るけど。


「ファー様が受け止めてくれる?」

「熱っぽい目で見つめるのはやめてね!?」


 照れるから!


 しかし、どうするか。


 私は周囲を見渡して……。


「そうだ。カレー、食べてみようか?」

「彼? 誰? カニ?」

「ううん。人でもカニでもなくてね、カレーっていう料理があるの。揚げた肉も乗せられるし、美味しいと思うよ」


 ちょうど近くに専門店があるし。


「それは期待。食べたい」

「じゃ、決まりだね」


 私たちはカレーのお店に入った。

 カツカレーを2人前、注文する。

 私は普通。

 フレインはかなり食べるので、カツを2枚も乗せた超大盛り。


 しばらく待つと出てきた。


「おおー」


 思わず私は声をあげた。


 メニューに写真が載っていたのでわかってはいたけど、実物はやはり迫力が違う。


 ステンレスのプレートに盛られた、ご飯と黒っぽいカレー。

 その上には、キャベツの千切りとソースのかかったカツが乗せられていた。


 家で食べるカレーとは、まったく違う。


 それは私にとっても、未知との遭遇だった。


 まずはルーだけ味見してみる。

 うむ。

 こってり、濃厚。


 普通に食べるには濃い気もするけど、だからこそのキャベツだろう。

 実に考えられている。


 ぱくぱく。

 もぐもぐ。


「ごちそうさまでした」


 美味でした。


「……異世界の料理は、本当にすごい。おすしもこれも最高」

「あはは。それはよかった。少しはすっきりできた?」

「カニカニ」


 フレインも気に入ってくれた様子だ。


 私たちは楽しい気持ちでお店から出て――。

 はい。

 ガラの悪い人たちに囲まれました。


「おい、テメェ。さっきはよくもやってくれたなぁ」


 裏通りでぶちのめした人たちが、仲間を連れて挨拶に来たのだった。

 ちょっと失敗したようだ。

 記憶も消しておくべきだったね。


「ファー様。オトコアサリしていい?」

「あー、うん。でも、ちょっと散歩してからにしようか」

「りょ」


 とりあえず目立たない場所でオハナシしませんかというと――。

 ガラの悪い人たちはついてきてくれた。


 で。


 フレインがまたぶちのめした。


 今度は向こうからなので、回復魔法の必要はないだろう。

 財布は取らないけどね!


 ただ、それで帰ることはできなかった。


「へえ――。やるねぇ。アンタらもしかして、噂の天使様ってヤツのお仲間? ただの女がこいつらを1人でなんて不可能だよなァ」


 1人の男が、ヒュウと口笛なんて吹いて、気軽な様子で物陰から姿を見せた。

 それは一見――。

 強そうには見えない、20代前半のチャラついた男だけど――。


「いや、もしかしてご本人ですかァ? 髪色は違うようだけどォ」


『フレイン、気をつけて。こいつからは魔力を感じる』

『むしろ楽しみなオトコアサリ』


 私は異世界語でフレインに警告を発した。


「ああ、自己紹介をしておこうかな。俺は、あば」


 ちなみに、あば、とは、多分、名前ではない。

 彼の嗚咽だ。

 フレインが問答無用で腹に一撃を入れちゃったのです。

 残念ながら彼に物理耐性はなかった。

 彼は気絶して倒れた。


 いや、うん。


 とはいえ、実際には、ほんの少しながらも魔術的な障壁はあった気がする。

 あっさり砕かれただけで。


 彼が魔術師であるのは、確かだったのだろう……。


『雑魚だった』

『あ、うん。はい』


 まあ、いいか。

 面倒だし、細かいことを気にするのはやめよう。


 ただ、彼は私を天使様と呼んだ。


 うーむ。


 すでに知ってはいたけど、現代世界の魔術師たちの間で、やはり私ことファーはそれなりに認知されてしまっているのだねえ。

 時田さんが動いてくれているようだけど……。

 一度、魔術結社とやらに、挨拶にいった方がいいのかも知れない。

 もしかしたら、オトモダチになれる人がいるかも知れない。

 敵対反応の出ていた相手は、全員1年分の記憶を消して、いったん、まっさらになってもらったわけだしね。


 目の前で倒れている、あばさん(仮)を起こして――。

 伝言――。

 だと齟齬があるといけないから――。

 お手紙を渡してもらおうかな。


 というわけで私は、いそいそと手紙を書かせてもらうのでした。

 内容は、こんな感じにした。



----

 こんにちは。初めまして。

 私は最近、天使と呼ばれている者です。

 近い内に、みなさんのところに挨拶に行かせてもらいます。

 よかったらオトモダチになりましょう。

 では。

----


 名前は、ファーではなく天使とした。

 ファーと名乗ってしまうと、思いっきり身バレするかも知れないので……。

 少しだけボカしてみました。


 あとは、よかったらオトモダチになりましょう、なんて……。

 私にしては、超積極的なことを書いてしまいました。

 頑張りました。


 さすがに敵対反応の出ていた人たちを、いきなりオトモダチ・パーティーに招待するのは怖いのでやめておいたけど……。

 仲良くなれたら、招待するのもいいかも知れないねっ!


 うむ。

 カンペキではなかろうか。


 これをあばさんに、魔術結社まで届けてもらうとしようっ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 >伝言のお手紙 これ向こうからしたら、どう見ても「ワレんとこの鉄砲玉(?)が挨拶しに来おったから、近いうちに挨拶に行かせて貰うわ!首洗ぅて待っとれや!」な、カチコミ行くんで宜しく…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ