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最高峰の学園で最弱な俺が最強を名乗る!?  作者: 秀の要の誠
第一章、始まった最高峰
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最高峰の自習

 その光景は俺に大きな衝撃を与えた。

生徒はもちろん教師ですら、起きていないような時間帯。そんな中でこいつは刀を振り、自分を鍛えていた。

まて、この時間にすでにここに居て、一体いつ帰っているんだ?

…………もし、もしもの話だけど、今の時間からいつもの帰る時間まで、特訓をしているのだとしたら。……こいつはいつ休憩を取っている?いつ、学習をしている?

そんな疑問が俺の頭を一気に支配した。

ここで一人考え込んでいても、埒が開かない。そう思った俺はその少女にバレないようにその場を後にした。


 学園に着き俺は真っ先に職員室に向かう。

バンっと力強く開けたその扉の音が静寂に響き渡る。でもそれに声をかけてくる人は誰もいない。なぜか?答えは単純だ。…この学園の教師ですらまだ出勤をしていない。ただそれだけだ。でもそんな普通のことがさらに白石の異次元さを際立たせる。

と、そんなことを頭で考えつつも俺は生徒表を漁った。

生徒表には顔写真や名前の他にも成績事情が載っている。だから職員室で厳重に保管されている。俺がそれに目を通していなかったのもそれが理由だ。

「S+クラス生徒表。生徒表。……これだ」

他のクラスに比べ薄さで人気を目立たせているそのファイルを俺は手に取る。

「しら、、いし。」

ページをペラペラめくる内にその少女を見つけた。

「クラスランキング、六位。白石夢香。

学業、武力、共に申し分ない実力。テストでは犬塚愛に敗北した六位と言う結果に留まった」

あんなに、特訓をしてなお学業にも力が入っている。

そんなことあるのか。あいつは一体何時にどうやって寝てるんだ?

それに、犬塚に負けて六位。これにも疑問が残る。

第一にこの学校のランキングは学業、武力の両方を見て決められると音乃瀬は言っていた。じゃあなんでこんなことになってる?白石のテストや勉強は見たことがないが、きっと犬塚よりはレベルが高いはずだ。戦いに負けただけで順位が付けられるならそれはただの武力だ。そう思い次は犬塚のページを見る。

「クラスランキング、五位。犬塚愛。

武力に特化した生徒。テストでは白石、天ヶ瀬を倒し仁王堂とも接戦をした。普段の任務への意欲的参加や成果も含め五位と言う結果に留まった」

なる、ほど。

要するに白石には普段の任務への参加が少なすぎたことと、力の分野において犬塚と離れすぎていたことが原因だと言うわけだ。

音乃瀬がこのクラスに入ってきたのは本当最近のこと、だから少し前まではあいつは最下位だったと言うわけか。

そんな時チャイムが鳴った。

俺は時計に目をやる。そろそろ教師たちは出社してくる頃だろう。それはそそくさとそのファイルを手に職員室を後にさるのだった。


 朝の教室と言うのは静かだ。

生徒はまだ登校してこない。完全に俺だけの空間。

少しの寂しさを感じながらも、その時間を有効的に利用し、俺はこの学園のランキング制度について少し考えていた。

学力、武力を共に測るテストのはずなのに圧倒的な武力で上位に君臨する。それって普通なのかな。

決して犬塚が悪いと言っているわけではない。彼女もまた自分の学を伸ばそうと必死に努力をしているからである。仁王堂の実力はイマイチわかっていない。でもこのクラスで二位を守れるほどには強いのだろう。そんな奴と互角の戦いをしたとなると、犬塚の強さは本物なのだろう。どこからどこを取った基準でランキングが設定されているかはよく知らないが、圧倒という何かそれがあるとないとでは違うのかもしれない。

思考が纏まらない中、俺はその気配に気づいた。

顔を上げそこにいたやつの顔を見て、俺は目を疑った。

「なにしてるの?こんなとこで生徒の写真見てニヤニヤでもしてたの?きっしょ」

「へ、は?いやいや勘違いだ。誤解だ」

「いや、それはないっしょ。ここで殺してやろうか?」

なんて物騒なやつなんだ。腐っても俺はこいつの担任なんだぞ。

てか、いきなり人に悪口流して、殺害予告って碌な大人にならないぞこいつ。そう考えると今のうちにこいつを普通の道に正してやるのも先生の勤めなのかもしれない。ちょっと労働するか〜。

「なぁ、いくらなんでもその態度は無いよな?俺は最強と言われた教師だぞ」

普通よりは大きな圧を感じたはずだ。俺としてもかなり良い味が出せたと思ったのだが、この少女、仁王堂凪にとっては逆効果であった。

「態度がでかい?なに様のつもりよ。またまた担任になっただけでもう王様気取り?最強だなんて知らない。本当にここで殺しても良いのよ」

頭に血が昇ったのか、さっきとは明らかに違うように、威圧を返すかのように声を荒げた。まぁ、それだけならまだよかった。

「なんだ?そんな物に頼るだなんて案外子供だな」

仁王堂の手にはしっかりと拳銃が握られていた。

「なに?知らないの?銃は簡単に人の命を奪えるのよ」

「なんだぁ?やったことあるかのような口ぶりだな?随分と挑発的な態度でもあったし、今ここで本当にやるか?」

眼前に銃口を突きつけられながらも俺は言葉を紡いだ。

正直めっちゃ怖かった。

「ちっ!本当に虫唾が走るやつね。もう………死んじゃえ」

その言葉を先に、仁王堂は引き金に手を掛けた。あれ?俺死ぬの?でもここで動いたらダサいし。嫌だぁ〜。

「ちょっと凪ちゃん!先生!なにやってるんですか」

そんな言葉が教室に響くと同時に仁王堂の手は止まった。はぁはぁ、助かった。

「ちょっとちょっと。こんな危ないもの置いて、どうしたの」

「音乃瀬ぇ〜」

俺を助けてくれたのは紛れもなく俺の生徒の音乃瀬だった。本当にいい子だ〜。自慢の生徒です。はい。

「麻弥」

「どうしたの?凪ちゃん」

「なんでもない」

そう言葉を残し仁王堂は教室から出て行った。一体なにをしにきたのだろう。

「それにしてもあの態度は良くないだろ。せっかく音乃瀬が心配してやったのに」

「あはは、いいんですよ先生。凪ちゃんは優しい子ですし」

「優しい子か〜。またいくつも癖があるような奴だな」

「あの子はそう言う子。先生珍しく早いね。」

「あ、あぁ。あとお前らすまんな。今日も放課後の自習に付き合うことはできない」

「全然大丈夫です。先生の都合優先してください」

「やだ。わかんない。」

天と地をこんな身近で感じることがあるとは、さすがに予想していなかった。

「とりあえずも今日とて自習だ、テストまであと一週間と一日。明日からは少し違うことをするから今日は体を休めるように。以上」

少しは教師らしいことを言い、俺たちはそれぞれの自習に取り組むのだった。


 キーンコーンカーンコーン。

今日の終了を知らせるチャイムが学園中に響き渡る。

「よし、今日はこれで終わりだ。どうしてもと言うなら止めはしないが、今日は帰るように」

「明日なにするかは教えてくれないんですか?」

「あぁ、お楽しみってやつだ」

そう言い残し俺はその教室を後にした。

今から向かう場所はいつも通り、白石夢香が通るあの道だ。

それから俺は足早にその場所へと向かうのだった。


 「はぁはぁ。明日でテスト一週間前、ここで休んでる暇は、、ない」

いつもは少し休憩に入るような間合いも、今日は休まずに特訓を続けた。ただでさえ、私はいい順位ではないんだ。前回のテストでは学力、武力共に仁王堂さんやレイニウドさんに戦う土俵にすら立たせてもらえない。その上、武力ではランクが一つしか変わらない犬塚さんにも負け。私がランキングを上げるにはその人たちの数倍、ずっとずっと努力を重ねるしかないんだ。

そう思うたびに、こんなところで止まって、休んでる暇はないと痛感する。私が、私の手で掴み取らないと、ランキングを上げないと、お爺様は納得してくれない。だから、今日も私は刀を握る。


 「ふぅ」

とため息を吐き、時刻を確認する。いつもの時間を少しだけ過ぎていた。ただこれでいい。家に着くのに遅れたら叱られるけれど、今から走れば全然間に合う。

そこから私は走った。次に向けて、自分の殻を破るために、走った。

辺りの暗さにはもう慣れていた。子供の笑い声、温かい家庭の光、そんなものを受けながら私は家に走る。

まだそれを私が感じる資格なんてないのだと理解をしながら走る。

「あっ…」

なんでだろう。私は道の真ん中で転けていた。いつも通り走っていたのに、普段躓くことなんてないのに。

自分の鈍臭さに嫌気を刺しながら私は立ちあがろうとした。

「お姉ちゃん大丈夫?怪我ない?」

驚き顔を上げると、見知らぬ男の子が手を差し出してくれていた。後ろには親らしき女性の方が心配そうに眺めている。

「ええ、大丈夫です。ありがとうございます」

私はそれだけを言い、立ち去ろうとしたのだが、その家族に止められてしまった。時間がないのだと言うのに…。

「大丈夫じゃないよ。身体ボロボロだし、疲れてるだろうし」

「そうよ?何かあったの?」

見知らぬ人が、事情も理由も知らずに心配をかけてくる。その優しさに私は少し苛立ちを覚えてしまった。

「大丈夫だと言っているでしょう。怪我もすぐに治ります。私には時間がないので」

男の子は何かを言おうとしていたが、私はそれを無視して走り出した。少し罪悪感はあったけれど、私には本当に時間がなかった。

「お姉ちゃん。嫌なら人に吐き出してもいいと思うよ」


時間はまだある。ギリギリお爺様にも叱られないだろう。そんなことを考えていた私にさっきとは別の声が響いた。

「おりゃ?今日ここにくるの遅かったじゃないか。そんなボロボロになってまぁ〜」

「…………ッ」

そこにいたのは他でもない、学園の担任であった。

「なんだダンマリか。少しは先生と話してくれてもいいんじゃないか?」

「なんで……なんで最近ずっとここに来るんか!私は元気だと言っているでしょう!もうほっといてくださいよ!」

さっきの苛立ちがまだ残っているのか、私は感情に任せて、先生である人にそんな言葉を放ってしまっていた。

それなのに、先生は怒るどころか優しい声音で、私に声をかけてきた。

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