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第四話 十三夜月の下、出会うは力無き憎しみ 前編

とある屋敷の一室、怒鳴り声では無いが大きめの声が聞こえる。

「兄様?今度はどこへほっつき歩いていたのですか?」

少女が自分の兄に説教をしているようだ。

「わ、悪かったって。それに、たしかに戦ったけど…」

「仮にも妖怪の貴族であるあなたが何をなさっているのですか!!その上、頬に怪我をしてるじゃありませんか!!というより、戦ったのですか!?」

会話の通り、二人は人間では無く妖怪、それも、九尾の兄妹だ。

九尾は、持てる妖気の量で尾の数が変わる。

妹のほうは、尾が五本で、妖気の量は普通より少し上。

兄のほうは、尾が八本で、かなりの量の妖気を持てるようだ。

「あなたは一応将軍なのですよ!?頬にかすり傷があるだけだから良いものの、大怪我でもしたらどうするのですか!?」

「お、俺はこれでも結構強いほうだぞ?!大怪我なんてするわけが無い…はず」

言いながら、尾や耳を隠しながら戦っていたさっきの状況を思い出す。

こっちが本気ではないと言えど、自分とほぼ互角に戦った少女。

怨念、それも女でありながら、鎌による接近戦で自分を苦しめた少女。

もし彼女も本気で無かったとしたら、十分自分を大怪我させることができそうな気がした。

「聞いているのですか?!兄様?!」

「あ、悪い。途中から考え事してたわ」

「…まったく、ちゃんとトドメを刺してきたんでしょうね?」

「あー…。弾無くなったから、こっちから逃げてきちまった」

「へ?弾が無くなった?結構持って行かれませんでしたっけ?」

「いやぁ、使いきっちまって…今、手持ちの弾は無いぜ」

妹である少女が目をパチクリさせる。

兄の銃の腕は、草原を駆ける虎を横からハンドガンで狙い撃てるほど。

使いきるとはとても思えない。

「…相手は、誰なのですか?」

妹が聞き、兄が答える。

「鎌を扱う、女の怨念だ」


私は、先日遭遇した妖怪の男について調べるため、二つの妖怪の国の怨念側の方を目指して旅的な事を始めた。

詳しい場所を知っているわけでは無いが、まだ人間であったころに妖怪の国について教えられた。

妖怪の国は海を挟んで南北に分けられており、南側が実体を持つ妖怪の国で、北側が怨念などの妖怪の国であると。

今自分がいる大陸は、丁度北側の大陸だ。

位置的には、西へ向かえば辿り着けるはずだ。

私は、さっそくその方角へと向かった。


ちなみに、この世界の大陸の数は三つ。

その他島などが多く在るが、どの国の物とか決められていないのがほとんどだ。

地底にも何かが在るとかの噂も有るが、定かでは無い。


とある日、私は歩き疲れて木陰で休んでいた。

その後、うっかり眠ってしまっていたらしい。

行動のとりやすい夜はまだ明けて無いが、ある程度時間が経ってはいるだろう。

そう考えながら体を動そうとしたら…

「すう……」

左から、何者かの寝息が聞こえた。

よく見れば、相手の右手と自分の左手が重なっている。

無論、すり抜けてはいるが。

相手は、普通の人間の少女。

どう考えても、自分の恐れの対象にはならない。

その、はずなのだが…

「すう……」

なぜだろうか、左手が動かしずらい。

別に怨念と人間の体の一部が重なろうと、互いに何かの感覚がしたりとかは無い。

今、自分が左手を動かそうとこの人間が起きる事は無い。

それなのに左手が動かせない。

「どうしよう……」

手持ちの鎌も笛も、片手じゃどうしようも無い。

それどころか、殺そうという考えと逆のこと、殺したくないという考えしか何故か浮かばない。

もう、怨念になるよりもかなり昔に名前を忘れた感情の一つが頭の中にある。

それは、人間はおろか、他の何者にももう決して抱くはずの無いと思っていたもの。

何故そんな感情が今さら有るのだろう。


彼女(何でこんな呼び方しているのか自分でもよく分からない)の寝顔を少し見てみる。

見惚れるとかという言葉があったような気がする。

今の自分がその状態なのだろうか。

「可愛い」という言葉が、口から出そうになるが起こしてしまわないようにと喉元で止めた。

起こさなければ行動が取れないのだが、起こさないでおきたいと何故か思ってしまう。

「すう……ん…?」

そう思っていたら、とうとう起こしてしまったようだ。

「あ…おはよう…かな?」

「あら、隣で寝てても気づかなかった子ね」

「うっ、…どちらかというと、起こしてほしかった」

あれ、なんでこんなに暢気な会話してるんだろ自分。

「不思議な女の子が寝てたからつい一緒に寝ちゃって。手を握ろうかとも思ったんだけどね、何故かすり抜けちゃうし…面白いわね、貴女」

彼女の身長は、大体中三くらい。

私より上だというのは一目で解った。


「…一応、私は怨念なんだけど…」

「…怨念?」

彼女の表情が一変する。

やはり、警戒するか。

でも、そのほうが良いかもしれない。

さっきの、殺したく無いという感情が残っている。

彼女には、早く私から逃げて、遠ざかってほしい。

「最近現れた黒尽くめの怨念…そう、貴女が」

「そうよ、私がその怨念よ」

そう思っていたら、彼女はまったく予想外の言葉を口にした。


「だったら、…


             …私の願いを叶えてくれるのは貴女なのね?」


「…え?願いを叶える?」

「貴女の場合、憎しみを司るのでしょう?私、一応恨んでいる人間がいるもの」

「…恨みを晴らすための力が欲しいって事?」

「そう、私にはそれをするための力が無いの。だから、噂で聞いていた貴女の事を待ち望んでいたのよ。いきなり本人と会えるとは思っていなかったけれど」

彼女は自分が何を言っているのか解っているのだろうか?

自ら手駒にしてくれと言っているのだ。

私の持っている笛を使って。


しかし笛で洗脳できるのは、「いじめっ子」と「いじめられっ子」のどちらかには当てはまる者のみ。

言わば、子供であることも条件に含まれているのだ。

恨みが有るということはやられた側なのだろうけども、見た目的に彼女は十五歳ほど。

子供と大人の境に近い年だ。

術がうまく成功するかどうかわからない。

けれど…

「…恨みの対象の規模は?」

「人の屋敷一軒です」

なぜだろうか、協力してあげたい。

「分かったわ。術が成功するか判らないけど…やってみるわよ」

もし成功したら、普段みたいに捨て駒にはしない。

自分の手元に置いておこう。

活動報告での予告に間に合わないでおきながら、

前後編に分けることに…。

待っていてくださった方、スミマセン。

後編はもう少し後に投稿することになります。

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