第一話 復讐開始
11月18日深夜 連載型に切り替えるにつき、多少書き換えました。
とある中学校、いわゆるいじめられっ子である少年がいた。
彼は、生まれ付き不幸だった。
生まれてすぐに親に捨てられ、今の育て親に拾われるまでの間にも、
酷い目に遭いながらの生きていた。
拾われてからも、今の親が本当の親では無い事や、
近くに居れば不幸に巻き込まれることなどから、
いじめを受けていた。
今の家に籠もっていても、結果は同じだった。
外から罵声を浴びせられ、家のひとが居ないときは、無理矢理押し入られて殴られたりすることもあった。
こっちからやり返そうとしても、返り討ちにされるだけだった。
正直、相手のいじめっ子達が憎かった。
また、力の無い自分や、見て見ぬふりをする大人たちも憎かった。
中学校になってからは、いじめはさらにひどいものとなった。
ただ暴行を加えるだけでは飽き足らず、凶器を持ってくるような者もいた。
つまり、殺されかけるような日もあったということだ。
しかし、今日は殺されかけるではすまなかった。
殺されたのだった。
人間には、絶望した。自分が楽しめれば後はどうでもいいとしか考えていないのだから。
誰が殺し、誰が殺されようが、自分に関係なければ、知ったことでは無いと人間は思っているのだろう。
僕が、そんな人間の一人であることに、憤りを感じたこともあった。
殺される瞬間、思ったことは、
「すべての人間が憎い」
ただそれだけだった。
急に、自分の意識が戻ってきた。
同時に、自分の姿が変わっていることに気がついた。
黒ずくめの少女に、そして、人を殺すのがあたりまえである「妖怪」になっていた。
場所はよく覚えている、自分が捨てられた森だった。
横には、切り株に黒一色の笛と、矢じりのついた大鎌が置かれていた。
触れると、使い方が頭に入ってきた。
笛は、いじめられっ子と、いじめっ子のそれぞれだけに聞こえる音色を奏でるもので、洗脳なんかもできるものだ。
鎌は、人間の首を刈るだけでなく、矢じりから妖気を流し、洗脳したものに妖術を使わせることもできる。
自分がするべきことはわかった。人間を滅ぼすこと。
今宵は満月、不吉なことを起こすには丁度良い。
月の満ち欠けによって妖怪達の妖気の大きさも変わり、今は最も大きくなる状態だからだ。
僕…いや、私の復襲劇は、これから始まろうとしていた。
地面を蹴り、私は夜空へと跳んだ。
いじめっ子の家には、扉や窓などを妖術ですりぬけて潜入し、その家族ごと皆殺しにした。
むごいと思われるだろうけども、私…元々の僕が味遭わされた苦痛はこんなのではすまない。
人でなしと言われても、知ったことではない。すでに人ではないから。
すれちがった通行人を洗脳し、他の人間を殺させたりもした。
洗脳する為の音色だけは、どんな人間にでも効果があるようだ。
自分以外のいじめられっ子に恨みを晴らさせるのも、面白いかもしれない。
八件目の家では、いじめっ子女子が一人でおり、血の付いた鎌を持った私を見て怯えていた。
「お前の席、ねーから。」と他人の席を占領しながら言う女子がいた。
暗くて少しわかりにくいが、顔からしてこいつがその女子だろう。
だから、私は言ってやった。
「お前の助かる術、もう無いから。」と。
その一言で、相手はこっちの正体が判りかけたらしい。
しかし、理解できずにもいるようだ。
それもそうだろう、こっちは見た目がまったく違うのだから。
判りかけた理由も解る。
こいつがさっきの言葉を使うのは、私に対してだけだからだろう。
私が相手に近づく。
相手は壁際で逃げられない。
相手の表情が、心が、これから自らの身に起こることを予想して恐怖に支配される。
私は、憎しみの感情を込めて鎌を振るい、相手の首を刎ねた。
私…元々の僕をいじめの対象にしていた人間は、ざっと六、七十人はいたはずだ。
三日くらいに分けて、どう足掻くかでも見てみようか。
そんなことを考えながら、私の復襲は続いてゆく…。
…そういえば、何故少女になったのだろう?
まあ、妖怪は男より女のほうが妖気を操るのはうまいだとか、そんな理由だろう。
洗脳とか、けっこう妖気を使ったような気もするし、そういうことで納得しておこう。
連載型に切り替えました。
前に投稿した短編は、消去する予定でしたが、一応残しておきます。
感想、アドバイス等を、お待ちしております。