旅行
ボケ=ボ
ツッコミ=ツ
ボ「最近どこか出かけた?」
ツ「こんなご時勢だし、どこにも出かけてへんよ」
ボ「そやろうな。お前貧乏やしな」
ツ「そういうことじゃなくて」
ボ「彼女もおらへんしな」
ツ「そういうことでもなくて」
ボ「指名手配されてるしな」
ツ「誰と勘違いしてるの?」
ボ「そんなお前に、俺が旅行気分を味あわせてやるよ」
ツ「旅行気分?」
ボ「本日は、田中旅行会社のツアーにご参加いただき、ありがとうございます」
ツ「ああ、バーチャルツアーね!旅行気分になれるね」
ボ「みなさま、右手に見えますのがー」
ツ「おー、美しい山ですね!」
ボ「これからお乗りいただくバスでございます」
ツ「まだ出発してなかったんか!」
ボ「40人乗りのデラックスタイプのマイクロバスでございます」
ツ「バスの細かい情報いらんから」
ボ「それでは出発いたします。レッツ、ゴー、三匹!」
ツ「お前歳いくつや」
ボ「ブーン……あ、みなさま、右手に見えますのが!」
ツ「おお、見事な……山かな?川かなー?……教会かな!?」
ボ「幻の珍獣、ピトマッチョギロリアギャーンでございます!」
ツ「え、なに? ここはどこの国? ピトマッチョ……覚えられへん!」
ボ「ボク、ちょっと静かにして!ピトマッチョギロリアギャーンが逃げちゃうから」
ツ「おれ、何歳の設定? よく噛まずに言えるな!」
ボ「黙らねえと放り出すぞ!」
ツ「怖っ! 急にガラ悪くなったな。ハンドル握ると性格変わるタイプ?」
ボ「ブーン……」
ツ「あの、トイレ行きたくなってきたんですけど」
ボ「ブーーーーーン」
ツ「トイレ!トイレ行きたい!トイレ!」
ボ「大?小?」
ツ「え……小ですけど」
ボ「キッ。ほら、行っておいで」
ツ「え、もうトイレ着いたの?」
ボ「いや、その辺の茂みでしてきたらええから」
ツ「えー、恥ずかしい!」
ボ「ええからしてこい!」
ツ「こわー。もうなんなんこの添乗員」
ボ「ピトマッチョギロリアギャーンに気をつけろよ!茂みに潜んでるからな!」
ツ「またピトマッチョか!それ、どんなやつ。想像つかん!」
ボ「この辺でトイレ中の子どもが何人も襲われているー!」
ツ「そんなところで降ろすなよ!」
ボ「ヤツらは、子どものおしっこが大好物だー!」
ツ「そっち!? いや、それはそれでなんか気持ち悪い! なんでこんな国に旅行きたんや、もー」
ボ「よく無事に戻ってきたな」
ツ「気色悪くておしっこ引っ込んだんだよ!」
ボ「ブーン…」
ツ「はー、なんかお腹すいてきたな」
ボ「まもなく夕食のお店に到着します」
ツ「ご飯は旅の大きな楽しみだもんね。なに食べれるんやろ。やっぱり現地の名物を味わいたいよな」
ボ「お店に到着しました。降りてください。カランコロン」
ツ「なんか安そうな店だな」
ボ「このお店の名物は、最高級の肉を使ったステーキです」
ツ「ほほう、肉料理ね。牛?豚?……はっ、まさか!ピトマッチョ……」
ボ「(食い気味に)チョッチョリネッチョダギャーンのお肉です」
ツ「新しいの出てきた! そこはピトマッチョギロリアギャーンと違うんかい!覚えてもうたわ!」
ボ「焼き具合はどうなさいますか?」
ツ「わからんから、よーーーく焼いて」
ボ「お、通ですねー」
ツ「ちゃうわ。わけわからん肉やから怖いだけや」
ボ「へい、おまちどう」
ツ「やっぱり安っぽいな。もぐもぐ。お、意外と…いけるねこのお肉」
ボ「それはほうれん草のおひたしです」
ツ「ほうれん草のおひたし!」
ボ「突き出しです」
ツ「居酒屋か!突き出し普通すぎ!もうご飯ええわ!ホテル連れてって!」
ボ「ホテル?」
ツ「ホテルだよ。今日泊まるところ」
ボ「これは日帰りツアーですよ」
ツ「日帰り?」
ボ「家に帰ってください」
ツ「家って。そもそも、ここどこ?日本なの?ジャパン?」
ボ「ノンノン、ジャポーン」
ツ「発音どうでもええわ!ここ日本なんか。どうりで出国した記憶ないわ」
ボ「山手線で帰られますか?」
ツ「東京やったんか!東京にピトマッチョギロリアギャーンとかおらんよ!?」
ボ「あれは日本ではイボイノシシと呼ばれています」
ツ「東京にイボイノシシもおらんと思うし、トイレ中の子ども襲いにこないよ!」
ボ「いやー、こんなにうるさいお客様は初めてです」
ツ「お前がうるさくさせてるんや。もう帰る!」
ボ「本日はご利用ありがとうございました。よかったら、次のツアーに申し込みませんか?」
ツ「もうええわ」